Research Project
永久凍土南限域では、カラマツ林の存在が湿原・永久凍土の安定性と関連し、その維持管理管理がCO2等の人間活動に由来するガス放出を含む地球温暖化と密接に関連している可能性がある。本研究は、中国大興安嶺および小興安嶺地区における森林(カラマツ林)-湿原複合生態系を対象とし、1)炭素を中心とする水・物質動態の把握、2)湿原の安定性と温暖化への影響、3)北海道のカラマツ林との比較、4)湿原におけるカラマツ林の物質循環への影響評価について調査・研究をおこなう。本年度は、小興安嶺地区伊春市に位置する豊林自然保護地区内に設定されている、黒龍江林業科学研究所の流域試験地にある観測用タワーを整備するとともに、流域出口の量水堰にデータロガー(水位計)、林内および土壌に気温・地温計を設置して林業科学研究所に所属する研究者および技術者の協力のもとに気象・水文モニタリングを立ち上げた。また、CO2観測用のクローズドパス渦相関用モニタリングシステムを現地へ送付して観測流域における運転を開始した。また、比較試験地として設定している北海道のカラマツ林(北海道大学天塩研究林・国有林苫小牧東部森林管理署)における炭素循環に関する観測を継続するとともに、北海道札幌研究林実験苗圃において、人間活動に由来して大気中に放出されるCO2も含めた地球温暖化ガスやオゾンなどの大気汚染物質の樹木生理影響に関する試験も課題とりまとめや今後の課題展開を視野に入れて開始した。加えて、科研3年目の中間とりまとめの一環として、このプロジェクトに関連した研究者による日中共同セミナー「Joint seminar of Nankai University & Hokkaido Universityon Da Hing・gan Ling, China」を中国天津市にある南開大学生命科学部で開催し、今後の両国研究者間の連携体制強化を図った。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
前年度調査地に加えた、小興安嶺地区豊林自然保護区試験流域での森林-湿原生態系における炭素・水循環に関する流域観測を、中国側研究者(黒龍江省林業科学研究所)と協力しながら立ち上げることで、より温暖化に鋭敏な地域の温暖化影響について評価可能になったこと。加えて、森林科学に関連する中国東北地区および北海道の研究者が協力して日中共同セミナーを開催することにより、両国間の研究者同士のネットワークが強化され、CO2等の地球温暖化ガスのみならず、PM2.5やオゾンなどの人為的大気汚染物質などについても、今後長期的な視点で共同研究の立ち上げやモニタリング体制の構築・継続が可能になったため。
大興安嶺および小興安嶺を含む中国東北部の森林-湿原生態系は氷河期より残存している凍土上に成立しており、地球温暖化の進行する環境下でもっとも影響を受けやすく、その安定性が生態系内に蓄積された炭素の大気中への放出と密接につながっている。この地域の森林や湿原では中国の研究機関が気象や土壌水分など森林-湿原生態系に関する多様な調査研究プログラムを立ち上げつつあるが、研究者の所属は様々であり、研究者同士の所属機関を超えた連携を含む組織的なモニタリング体制の確立や情報交換の場の提供が、この地域における温暖化研究の推進や長期的な視点に立った観測データの保存・活用にとって必要である。また、中国東北部はCO2等の地球温暖化ガス以外にもPM2.5やオゾンなどの人間活動に由来する環境汚染物質の樹木影響についても問題となっている地域であり、観測態勢の充実はこの地域上空の偏西風の風下となっている日本への影響も含め、将来的に予想される課題解決にとっても有効であると考えられる。
All 2014 2013 Other
All Journal Article (12 results) (of which Peer Reviewed: 9 results) Presentation (5 results) Book (1 results)
Journal of Clean- Soil Air Water
Volume: 42 Pages: 印刷中
10.1002/clen.201300007
Environmental Pollution
Volume: 184 Pages: 682-689
Landscape and Ecological Engineering
Volume: 10 Pages: 1-8
10.1007/s11355-0212-0207-2
Biogeosciences discussion
Volume: 11 Pages: 2847-2885
European Journal of Forest Research
Volume: 133 Pages: 印刷中
10.1007/s10342-013-0744-8
エアロゾル研究
Volume: 29(S1) Pages: 160-167
Trees
Volume: 27 Pages: 1647-1655
10.1007/s00468-013-0912-y
Annals of Botany
Volume: 112 Pages: 1149-1158
10.1093/aob/mct166
Tellus B
Volume: 27 Pages: 1-13
10.3402/tellusb.v65i0.20792
Ecological Modelling
Volume: 261-262 Pages: 80-92
科学と生物
Volume: 51 Pages: 559-565
AsiaFlux Newsletter
Volume: 35 Pages: 3-12