2013 Fiscal Year Annual Research Report
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23256001
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 芳嗣 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00173922)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リーシュマニア症 / 内蔵型 / モンゴル |
Research Abstract |
本研究では内蔵型リーシュマニア症(VL)の病態機序の解析、免疫学的生体防御機構の一端を明らかにするために、重篤な病態を再現できるVLマウスモデルを確立し、昨年度はLeishmania donovani 感染に対する感受性にTh2反応、抵抗性にTh1反応が関与していることを明らかにした。本年度はさらに本病態マウスモデルを用いた治療薬in vivo 評価系の有用性を示すことを目的とした。褐藻類ヒバマタ目ホンダワラ科アズマネジモクより単離したキノンテルペノイド10種についてin vitroにおける原虫増殖抑制効果を評価した結果、10種のうち6種が10 μg/mlの濃度で50%以上の増殖抑制効果を示した。100%の増殖抑制効果を示したキノンテルペノイドについて、本マウスモデルを用いてin vivo 原虫増殖抑制効果を検討した。対照として既知の治療薬であるAmBisomeを用いた。感染7週後に重篤なVL を発症していることを確認後、30日間の腹腔内投与を行ったところ、治療終了翌日には双方の治療群の脾臓、肝臓においてLDUおよび培養法何れの方法でも感染原虫は観察されなかった。尚、このキノンテルぺノイドをsargaquinoidatic acidと命名し、抗リーシュマニ症治療薬として特許を取得した。また、本マウスモデルがVL治療薬のin vivo評価に有用であることが示された。 リーシュマニア症の伝播機構、発生機構の解明を目的としたモンゴルにおける現地調査では、リーシュマニア原虫の主な宿主として考えられているRhombomys opimusを捕獲し原虫保有率を調査した。耳介部試料の培養では15.3%の原虫検出率、原虫粗抗原に対するELISA法およびLSUrRNA遺伝子を標的としたPCR法では共に53.8%の陽性を示したことから、モンゴル西部でR.opimusにおけるリーシュマニア原虫保有率は高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度前半まで、バングラデシュPost Kala-azar dermal leishmaniasis由来の原虫株の分離は1株のみであったが、後半より分離法の改良に伴いのヒト内蔵型リーシュマニア症患者よりの株の樹立効率があがり、リーシュマニア原虫間の比較検討試験が加速される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果をもとに、バングラデシュ、トルコ、モンゴル、中国ごとに海外共同研究者と協力し旧大陸におけるリーシュマニア症の実態調査、媒介昆虫および保虫宿主の現地調査を以下の項目につき継続する。(1)病原虫:現地医師の協力のもと、本症が疑われる患者に皮膚または骨髄ニードル・バイオプシーを行い、原虫の検出、原虫分離のための培養を行う。(2)ヒト血清および生検試料:患者発生地域周辺住民の血清、およびリーシュマニア症患者由来生検試料を得る。(3)動物血清および生検試料:保虫動物の候補動物であるイヌの血清、および動物由来生検、剖検試料を得る。(4)ライトトラップ等を用いて媒介昆虫サシチョウバエの捕獲を行なう。 得られた試料を用い(1)樹立された原虫株についての遺伝子解析および抗原性解析を行い、これら樹立株を用いて、各種実験動物における病態形成機序を組織学的に解析する。(2)ヒト血清を用い、原虫種特異的な抗原を用いた免疫学的探索を行う。生検試料を用い病理組織学的、免疫組織化学的に解析する。(3)保虫宿主より原虫分離および血清疫学的解析を行い伝播サイクルへの関与を推定する。さらに動物の原虫感染率をLAMP法により推定する。 (4)媒介昆虫の同定と遺伝子比較解析を行う。これらの得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。疫学的研究に際して、各国の厚生省およびそれに準ずる機関の承認を得るとともに、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部のヒトを対象とする研究倫理審査委員会の承認を得て実施する。動物実験に関しては、東京大学動物実験実施マニュアルに従い研究計画書を作成し、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部の動物実験委員会の承認を得て行う。また我が国においてリコンビナント原虫抗原の作製等組換えDNA実験を行うに際しては東京大学組換えDNA実験委員会の承認を得て、研究を実施する。
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Research Products
(12 results)