2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経新生を調節するBRINPファミリー遺伝子が関与する精神神経疾患の基盤解明
Project/Area Number |
23300135
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
松岡 一郎 松山大学, 薬学部, 教授 (40157269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸田 敏明 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (20170186)
小林 三和子 松山大学, 薬学部, 助教 (30396329)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 精神神経疾患 / 細胞周期 / BRINPファミリー / 神経新生 / がん抑制因子 / 遺伝子欠損マウス |
Research Abstract |
これまでに申請者は、BRINP1ノックアウト(KO)マウスにおいて、海馬歯状回における神経新生の亢進、未成熟な神経細胞の増加と神経過興奮時における脆弱性、ヒト精神疾患の症状に類似した行動異常を示すことなどを明らかにした。 項目AのBRINP-KOマウスの作製と行動解析については、BRINP3ターゲティングベクターを用いた相同組み換えESクローンを得、キメラマウスの作製を経てBRINP3ヘテロKOマウスを得ることができた。現在、BRINP3ホモKOマウスを得るためのBRINP3ヘテロ同士、また、BRINP1とBRINP3とのダブルKOマウス作製のための交配が進行中である。BRINP2については、相同組み換えを起こしたES細胞の選択を現在行っている。 項目BのBRINPファミリーのタンパク質機能の解析については、神経幹細胞(NSC)にBRINP-GFPの融合タンパク質を強制発現させタイムラプス解析により細胞増殖を観察した。NSCにBRINPタンパクを強制発現すると、30時間の観察において途中で細胞死を起こす細胞の割合がコントロールのGFP発現細胞の約45%から約70%に増加した。BRINPの発現はNSCが神経細胞へ分化する際に一過的に上昇すること、BRINPの発現は神経分化を直接誘導しないことから、BRINPが神経細胞の分化・成熟過程においてG0期への突入を促進し、持続的なBRINPの発現は細胞死を誘導することが示唆された。 異なる発達時期のマウスにおける神経新生を解析したところ、BRINP1-KOにおける神経新生の亢進は7、8週齢のマウスで顕著であり、10週齢のマウスでは野生型マウスとあまり変わらないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
項目AについてはBRINP3ヘテロマウスが得られたが、ヘテロ同士の掛け合わせによる繁殖の効率が悪く解析可能なBRINP3-KOマウスが得られていない。 項目Bについては、現在組織化学的解析を重点的に行っているため、タンパク質相互作用の解析が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
項目AについてはBRINP3ヘテロ雌マウスの子育てに問題(育児放棄)があるため、現在ICRマウスを里親にすることで改善中である。今後、BRINP3のKOマウスを用いて成体脳における組織化学的な解析を神経・グリアマーカーや神経分化の段階に特異的なマーカーの発現などBRINP1-KOマウスで行ったものと同様の項目について進める。また行動実験もBRINP1で異常の見られた多動性や社会性、不安様行動を中心に解析を行う。 BRINP2-KOマウスについては、相同組み換えES細胞からキメラマウスが得られたが、生殖系列への伝搬が確認できなかったことから、より未分化な状態を維持した組み換えES細胞を得るため再スクリーニング中である。 項目Bについては、BRINP1-KO海馬スライス標本を用いての電気生理学的解析を研究協力者が解析中であり、引き続き検体数を増やして解析予定である。 神経新生の解析については、現在新生細胞(BrdU取り込み細胞)が正常にニューロンへ分化・成熟するかどうかを各種マーカーの抗体を用いて解析中である。 また、今年度の交付申請書に記載した、精神疾患の発症のメカニズムに関連したBRINP-KOマウスにおけるストレス・炎症関連分子の発現様式についても解析予定である。
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