2011 Fiscal Year Annual Research Report
心機能制御における心肥大・心室形態調節の分子基盤と臓器機能連関のフィジオーム解析
Project/Area Number |
23300171
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
毛利 聡 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00294413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮坂 武寛 姫路獨協大学, 医療保健学部, 教授 (60308195)
橋本 謙 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80341080)
氏原 嘉洋 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80610021)
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Keywords | 心肥大 / 心機能 / カルシウム / 冠循環 / 心不全 |
Research Abstract |
心筋細胞は生後直ぐに分裂能を失い、機械的仕事量の増加に対しては心筋量を肥大させるとともに心室の形態を変化させて環境に適応する。近年、心肥大の分子メカニズムとして、Ca^<2+>の関与が明らかにされてきたが、心筋細胞の周期的な収縮と弛緩は細胞内へのCa^<2+>流入と流出によって制御されており、様々なCa^<2+>輸送体が心筋細胞の膜に発現している。今回我々は心筋細胞から細胞内外のNa+濃度勾配を利用してCa^<2+>を細胞外へ排出するNa^+-Ca^<2+>交換体(NCX)について着目した。NCXは心不全患者において発現が増加しているが、その病態生理学的意義は不明である。そこで薬剤によりNCXを心臓のみで強発現させることが出来る遺伝子改変マウスに大動脈結紮による圧力負荷を与えて心不全を惹起し、不全心筋へのNCX発現増加の効果を検討した。 大動脈弓部を縮窄し、術後8週で左心室短縮率は術前の55%から34%まで低下した。この時点からNCXを強発現させる群と対照群に分け、心不全に対する効果を検討した。NCX強発現から8週間後、不全心筋では小胞体Ca^<2+>ストア機能が低下していたが、NCX強発現によってCa^<2+>ハンドリングが改善し、対照群に比較して心機能も維持されていた。また、NCXを強発現させるとCa^<2+>流入系である電位依存性Ca^<2+>チャネルや筋小胞体のリアノジン受容体の局在も改善されることが明らかになった。NCX強発現は左心室壁を肥厚させ、弛緩能を低下させた。大動脈縮窄モデルに対しては、圧負荷による心機能低下を抑制し、非代償期の心室拡大も抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルシウム輸送体(Na/Ca交換体)を心筋細胞特異的に薬剤誘導によって強発現させるモデルマウスを作成し、その心機能に及ぼす影響を評価出来た。また、大動脈縮窄による圧負荷を行い、心肥大から心不全に至る経過におけるNa/Ca交換体の役割を生理学的・生化学的に評価出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
大動脈弁を破損して心室内逆流を起こし容量負荷をかけるモデルをマウスにて作成し、マクロ心機能およびタンパク・遺伝子レベルでの心肥大関連因子(タンパクリン酸化酵素A,C,やそれらのターゲットとなるカルシウム輸送体など)が圧力負荷、容量負荷の強度にどのように依存するかをスクリーニングして、生理的機能適応としての心肥大をマルチスケールで評価する。また、大動脈弁逆流モデルでは左心室が拡張し、冠循環が障害される可能性があるため、冠循環のリモデリングについて検討する。
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