2012 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷後の機能回復における再髄鞘化の役割とその制御
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23300204
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
緒方 徹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所・運動機能系障害研究部, 部長 (00392192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉森 道也 富山大学, 医学部, 助教 (20464026)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / 協調運動 / 痙縮 / 細胞培養 |
Research Abstract |
・再髄鞘化抑制の運動機能回復への影響の解析:H23年度より実施していたマウス脊髄損傷モデルに対するコレステロール代謝阻害薬Simvastatin投与による再髄鞘化抑制実験は、Simvastatin投与群とコントロール群でそれぞれN=8の十分なデータを得ることができた。組織学的検討では損傷から4週目までに観察される再髄鞘化はSimvastatin投与群において損傷中心を主として減少していることが確認された。同時に歩行機能評価においても投与群はコントロール群と比較して後肢機能が不良だった。また、Simvastatinの投与によって炎症反応には影響がないことも確認された。これらの結果は髄鞘の再形成が運動機能回復に寄与しているという本研究の仮説を裏付けるものであった。 ・オリゴデンドロサイト培養系による再髄鞘化モデルの作成:オリゴデンドロサイトとニューロンの共培養による髄鞘形成アッセイはH23年度に引き続き検討したものの再現性のある実験系を設定することは困難であった。対応策としてオリゴデンドロサイトの単独培養による分化誘導実験を行った。分化の進行を阻害する因子としてこれまで報告されていたHesシグナルの下流メカニズムの解析を行い、転写因子Ascl1がHesシグナルの直接のターゲットになっていることを確認し、学術誌にて発表した。 ・再髄鞘化促進モデルの探索:平成24年度はin vivoにて髄鞘再生促進を行う実験については予備実験を行うにとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊髄損傷後の再髄鞘化への介入とその影響を検討する実験計画において、モデルマウスへの薬剤投与によって再髄鞘化を抑制すること、およびその影響を多面的に評価する実験系が確立し、成果発表できるだけのデータが蓄積されている点は計画以上の進捗である。培養系による実験系については当初予定していたオリゴデンドロサイトとニューロンとの共培養の条件設定に時間を要している。一方、オリゴデンドロサイトの単独培養からは髄鞘形成の制御に関する知見が得られ、論文発表された点は計画以上の進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
・再髄鞘化抑制の運動機能回復への影響の解析:H23-24年度の結果からコレステロール代謝阻害薬Simvastatin投与によって損傷脊髄内の再髄鞘化が抑制され、その結果歩行機能の回復が阻害されることが確認されている。H25年度はこうした後肢機能の低下を他の運動解析手法を用いて正確に評価することを試みる。また研究最終年度での学術誌での成果発表を行う。 ・オリゴデンドロサイト培養系による再髄鞘化モデルの作成:これまでの経過でニューロンとオリゴデンドロサイトとの共培養による髄鞘形成in vitro解析は困難であることが予想されるため、髄鞘形成促進因子の薬剤スクリーニングはオリゴデンドロサイトの単独培養系を用いる。実際には分化マーカーとして確立している髄鞘関連因子の誘導の有無によって薬剤の作用を評価し、髄鞘形成促進因子の同定を試みる。 ・再髄鞘化促進モデルの探索:in vitroの髄鞘形成誘導因子探索の結果を踏まえ、脊髄損傷モデルを用いて通常の自然経過よりも再髄鞘化が促進された状態を作り出すことを目指す。新規に同定する薬剤とは別に、すでに培養系において髄鞘形成作用が確立しているサイロイドホルモンの投与実験も同時に行い、こうした髄鞘形成促進が個体レベルで後肢機能の改善につながるかを検証する。
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