2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規水素発生素材の経口投与による水素分子の老年病と生活習慣病の予防効果
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23300257
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
太田 成男 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00125832)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / ミトコンドリア / 酸化ストレス / 水素 |
Research Abstract |
申請者は、水素分子(H2)が新しい概念の抗酸化物質であることを証明し、世界に水素医学を提唱した(Nature Medicine, 2007;13:688-94)。その後6年間の間に、200報以上もの論文が発表され、H2の生体への抗酸化作用と様々な作用が確立された。申請者らは、H2の投与法を検討した結果、H2の摂取量よりも投与経路が重要で、経口投与することが最も効果的であることを明らかにした。そこで、本研究では、胃の中で大量にH2を発生させることにより、経口投与と同じように大量のH2を摂取できるようにする。 本年度は、昨年に引き続きH2の投与法としてMgH2を経口投与する方法を確立することに努めた。MgH2は、水素吸蔵金属であり、水と反応することによって、水素2分子を発生する。MgH2は空気中の酸素と反応せず安定であり、水素発生時にも熱をほとんど発生しないという利点がある。また、反応後は、Mg(OH)2となるので安全である。MgH2をグリセロールに懸濁して経口カテーテルでマウスに投与した。 昨年に引き続き、水素の生体内動態を観測した。すると血中に多量の水素が出現し、数時間維持された。この結果より水素が体内で発生し、血中に移行することが証明された。 昨年に引き続き、効果としては、2型糖尿病モデルマウスにあるdb/dbマウスを対象とした。従来、水素水をdb/dbマウスに投与すると血中の中性脂肪濃度が低下することを明らかにしているので、血中の中性脂肪を定量した。すると、2週間後には水素水を経口投与したよりも効果的に中性脂肪を低下させた。 昨年に引き続き、水素水の自由摂取によって遺伝子発現が変化したので、MgH2を経口投与して比較した。MgH2を経口投与は、水素水の自由摂取よりも顕著な結果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、第一にMgH2を経口投与して、実際に体内で水素が発生することを確実にすることが前提である。体内動態を明らかにすることによって、水素が体内で発生し取り込まれることを明らかにした。 水素水をdb/dbマウスに投与すると血中の中性脂肪濃度が低下することを明らかにしているので、血中の中性脂肪を定量した。すると、2週間後には水素水を経口投与したよりも効果的に中性脂肪を低下させた。すなわち、この方法は効果的であることが証明された。 水素水の自由摂取によって遺伝子発現が変化したので、MgH2を経口投与して比較した。MgH2を経口投与は、水素水の自由摂取よりも顕著な結果を示した。この結果により、水素の効果のメカニズムを解明する手がかりをえた。 以上の理由により、おおむね順調の研究はすすんでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
私たちの実生活において、MgH2を摂取できるようにするには、安全であることを検証することが重要である。毒性試験によって、MgH2投与による毒性・発がん性・催奇性が無いことを確認する。 水素発生素材であるMgH2投与後の遺伝子発現パターンの変化をマイクロアレイによって網羅的に調べる。肝臓・消化器から分泌されるホルモンによって影響 される遺伝子発現パターンかどうかに着目し、遺伝子発現パターンの時間的変化により、酸化ストレスが軽減するのか、他に原因があって二次的に酸化ストレス を軽減するのかに着目して解析する。時間変化によって、どの遺伝子変化が先行するかなどを調べることによって、遺伝子発現間の因果関係を明らかにする。 転写を制御するメカニズムとして、水素が作用する転写調節因子を同定する。水素は、タンパク質のニトロ化、またはニトロソ化 を抑制することを明らかにしているので、転写の制御に関する因子のニトロ化、またはニトロソ化の抑制程度を調べ、遺伝子発現制御を水素が行うメカニズムを 解明する。 得られた結果を基にして、メタボリックシンドロームの予防効果を検討する。得られた結果をとりまとめ論文として発表する。
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Research Products
(32 results)