2012 Fiscal Year Annual Research Report
科学技術ガバナンスの形成のための科学教育論の構築に関する基礎的研究
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23300283
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
熊野 善介 静岡大学, 教育学部, 教授 (90252155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 洋一 国立教育政策研究所, 研究開発部, 教育課程調査官 (10353393)
萱野 貴広 静岡大学, 教育学部, 教務職員 (30293591)
神田 玲子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 研究員 (40250120)
三枝 新 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 研究員 (40392229)
中武 貞文 鹿児島大学, 産学官連携推進センター, 准教授 (40404016)
丹沢 哲郎 静岡大学, 教育学部, 教授 (60272142)
内ノ倉 真吾 静岡大学, 教育学部, 准教授 (70512531)
奥野 健二 静岡大学, 理学部, 教授 (80293596)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 科学技術ガバナンス / リスクコミュニケーション / 放射線教育 / STEM教育 / 防災・減災教育 / STS教育論 / シティズンシップ教育 |
Research Abstract |
2年目の研究実績としての中間報告書としてまとめた。第1章は現在のアメリカが科学技術ガバナンスを達成するための科学教育をどのように転換してきたかをまとめた。第2章では第4期科学技術基本計画と新学習指導要領が示している共通の方向性と具体的な先進的な取り組みを行っている学校の事例を示した。第3章では、「国際社会における放射線リスク認知:ドイツ」と題して、ドイツの原子力・放射線リスクに対するガバナンスの在り方が、東日本大震災に伴う原子力発電所事故を契機としてどのように変化したのかについてまとめた。第4章では、「放射線リスクを理解するためのリテラシーの向上」と題して、放射線のリスクコミュニケーションにおける問題点を福島原発事故の前後で整理し、今後の在り方および放射線教育ならびにリスク/安全/健康に関する科学教育にとって必要な要素に関する考察がなされた。第5章では、科学技術ガバナンスの必要性を論じた上で2012年に幼稚園、小学校、中学校の管理職の先生方を対象に放射線教育・減災教育を行ないアンケート調査の結果の報告、「高レベル放射性廃棄物の地層処分選定に関する日本型合意形成モデルの構築」と題した研究、「静岡県の防災・減災と原子力」教育についてまとめられた。さらに「社会的な文脈における討議とその能力の育成に向けて」と題して、科学技術ガバナンス力を高めるための教育モデル構築のための理論的な背景と考え方がまとめられた。そして、「ミニ・パブリックス」の事例研究をし、大学生対象に調査した結果などがまとめた。第6章では、「産学連携・地域連携・イノベーションの視座からのフィールド調査報告」と題して、ワークショップの報告と分析をした後「科学技術イノベーション政策」に言及し、アメリカで起こっている科学教育改革であるSTEM教育が実は科学技術ガバナンスの延長線にあることを明確化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前回も示したが、本研究が採択されてから、東日本大震災があり、「科学技術ガバナンス形成のための科学教育論の構築」の基礎研究を推進することよりも、日本全体な国難に向けて、様々な対策に追われてきた。その一方で、震災から2年を経過し、少しずつではあるが、問題点や課題が整理されつつある内容も出てきた。昨年度は本研究の2年目であり、夏の日本科学教育学会の年会では、課題研究として研究分担者の研究成果の発表ができただけでなく、研究代表者はアメリカに3か月間の短期滞在ができ、アメリカにおける科学技術ガバナンスの大きな流れを獲得できた。そして、2013年の3月にそれぞれの2年目までの研究のまとめとして、中間報告書をまとめられたのは大きな成果であり、やや遅れ気味ではあるが、着実な研究成果が達成されているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23/24年度までの研究の成果に基づいて、学校段階・年齢段階という観点あるいは、 科学技術ガバナンスの形成に必要とされる市民的資質・能力を明確化・構造化する。構造化に当たっては、平成23/24年度までに整理した、科学技術ガバナンス論、科学教育に関連するガバナンス教育論、STS教育論、シチズンシップ教育論、ESD論・STEM教育論に関して、文献・資料の知見を参照する。明確化・構造化された市民的資質・能力は、既存のカリキュラム等と比較対照しつつ、学校教育カリキュラム、高等教育カリキュラム、生涯学習プログラムへと関連付ける。教育内容としての市民的資質・能力の大枠が定まってくるのと並行して、授業デザインの指針や有効な教授ストラテジー、教授学習の組織・形態についても検討する。上記で検討する過程での暫定的な内容・カリキュラム論、教授学習論が一定の有効性を持ちうるかどうかを、③フィールド調査によって実証的に検証する。この結果の分析・評価を踏まえて、科学技術ガバナンスの形成に資する科学教育論の基本的な枠組みを確立することにしたい。
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