2012 Fiscal Year Annual Research Report
高等教育における「持続可能な開発の為の教育」評価可能な枠組開発と普及構造の構築
Project/Area Number |
23300285
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
GANNON Tracey 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (40378849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SINGER Jane 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00570003)
深町 加津枝 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (20353831)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 持続可能な開発の為の教育(ESD) / 環境教育 / エコ・リテラシー / サステナビリティ学 / 積極的環境行動 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
研究実施計画に記した計画に沿い,15週間に及ぶ試験的コースを設計し実施した.試験的コース設計においては,①積極的環境行動型である事,②文理融合型である事を念頭に置いた.当該試験的コースは,昨年度実施したワークショップ「Defining Our ESD」より得られた知見と上記①②を融合させコース設計したものであり,「Building a Sustainable Future: Principles and Challenges」として,前期に京都大学国際教育プログラム(KUINEP)の英語科目として開講した.ESDカリキュラムの評価枠組の開発に関しては,学生同士の相互作用を観察評価するに留まらず,学生自身による自己評価手法及びオンライン掲示板(BBS)システムを活用し,課外のディベートや討議も評価対象とした.当該試験的コースによって得られた知見は,後期(2月20日‐3月22日)にベトナムのフエ大学で実施したTertiary ESD Initiativeの試験的コースにおいても実践した.フエ大学においても本研究で開発したESDカリキュラムの評価枠組の手法を活用した.特にオンライン・コース・サポートを利用した課外のディベートや討議は,学生に,授業から日常に継続した学習機会を与えたと言える. また,第6回「HESDフォーラム」を11月17‐18日に京都大学において開催した.参加者は50人を超え,本フォーラムのテーマである「キャンパスサステナビリティ-」に関して積極的な意見交換が行われた.本研究で実施している前述のESD試験的コースプログラムの活動報告を行い,ESD研究,教育を実践している他大学の研究者と意見交換を行うことで,ESDプログラム構築に向けて研究活動が発展した.また,他大学のESDプログラムや評価方法について情報の集約,意見交換が出来,本研究目標達成に大いに近づいた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
持続可能な開発のための教育(ESD)プログラムの教育モジュールを開発し,その評価枠組みを構築することが本プロジェクトの目的である. プログラムの教育モジュールの開発としてのコース設計及びサステナビリティ教育方法の開発研究に関しては当初の計画以上に進展していると評価している.京都大学とフエ大学における試験的コースの関係研究者,関係教員そして参加学生による評価は大変に高く,次年度以降の継続した開催を強く希望している.また,プログラムの教育モジュールは具体化しフィールド実習とそのフィードバックを含めて詳細にわたるところまで開発が進んでいる.Routledge publishers(ルートリッジ社,イギリス)より,環境とサステナビリティのシリーズで本研究の成果に係る内容での出版提案を薦められているところである. しかしながら,ESDカリキュラムの評価枠組の構築に関しては,やや遅れていると評価する.その原因として,一般に広く行われている○×式や単数回答式のような容易に定量的に評価する方法や,期末ごとの小論文を課題として学生に課しているのではなく,当該研究においては,学生同士の相互作用の観察評価,学生自身による自己評価手法,オンラインシステムによる課外ディベートや討議の評価を評価方法として取り入れたからと言える.これらは,定性的なものであり,准定量化するにあたり想定以上の時間を要している.前期に実施された京都大学での試験的コースの結果に加え,3月のフエ大学での試験的コースの結果は集計分析の後,更に精査する必要がある.加えて,すでに2013年度前期コースが京都大学において開始されたことも評価枠組の開発の研究をやや遅滞させる原因となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
日本における試験的コースの2年目である. 本年度は,オンラインシステムによる課外ディベートや討議の場を,BBSからFacebookに移行する.緊急の課題は,昨年度前期に実施した京都大学での試験的コースの結果と3月に実施したフエ大学での試験的コースの結果を集計し分析することである.当該研究における学生同士の相互作用の観察評価,学生自身による自己評価手法,ディベートや討議のテキストデータは「テキストマイニング」などの手法により分析を試みる.2013年8月までに,2012年度に実施された京都大学およびフエ大学における試験的コースの結果を国別にまとめる.当該コース関係者の第1回目の6ヶ月後追跡調査を,フエ大学については2013年9月にアンケート調査あるいはSkypeによる面接調査を実施,京都大学については2014年1月に面接あるいはアンケート調査を実施する.追跡調査のテキストデータは前述の手法を用い,学生の積極的環境行動が教育モジュールの知識と行動から培われたものかを分析し,本研究のESDカリキュラムの有効性と非有効性を吟味する.定性的データの准定量化及び分析評価などに関しては,イギリスの社会経済学研究者でサステナビリティ・イニシアティブに詳しいダンクレイ氏に協力を仰ぎ,京都大学内においては当該プロジェクトのメンバーであるマクレラン教授およびハサード氏他とプロジェクトチームを編成し取り組む予定である.京都大学及びフエ大学での試験的コースの6ヶ月後追跡調査については,継続して2回目等も実施することができれば,さらに説得力のある分析が可能となると考えている. 本年度は最終年度に当たるため,本研究課題のまとめのセミナーの開催を計画する.
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Research Products
(21 results)