2011 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代から明治初期にかけての絵画・版画・和本の色材と制作技術に関する研究
Project/Area Number |
23300327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
小瀬戸 恵美 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (80332120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (50205663)
眞鍋 佳嗣 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (50273610)
鈴木 卓治 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (70270402)
高嶋 美穂 独立行政法人国立美術館・国立西洋美術館, 学芸課保存科学室, 研究員 (80443159)
大久保 純一 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (90176842)
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Keywords | 文化財 / 色 / 版木 / 錦絵 |
Research Abstract |
平成23年度は「1.江戸後期から明治初期の絵画資料の材質と製作、流通」においては分析方法の確立とデータ蓄積をおこない,「2.顔料、染料や膠着材の流通」「3.天然顔料の原料となる金属鉱物の産地推定と技術解明」については主として文献による情報収集と試料採取計画を行なった。特に,1、においては分析機器による顔料、染料の自然科学的分析だけでなく,錦絵版木測定用治具を用いて歌川派錦絵版木群のうち「源氏雲浮世画合」を中心として3次元計測による表面調査を本格的に行い,彫りの技術の解明にむけて前進している。また,ラマンイメージング測定による江戸後期資料測定を行なったところ,従来の機器では測定・同定ができなかった藍の同定が非破壊・非接触で行うことができた。加えて、赤色顔料について江戸後期の資料で人工水銀が使用された可能性があることが判明し再調査を進めている。もしも,人工水銀がしようされていたとすれば,従来美術史研究では判明していなかった新たな事実となる。また,米国の対象資料所蔵機園(ボストン美術館,スミソニアン研究機構フリーア美術館,アメリカ議会図書館,メトロポリタン美術館)と資料の状態確認および調査研究についてのディスカッションをおこない,具体的な実施に向けて検討中である。 現時点において,3課題のうち「1.江戸後期から明治初期の絵画資料の材質と製作、流通」については着実に成果がでているが,「2.顔料、染料や膠着材の流通」「3.天然顔料の原料となる金属鉱物の産地推定と技術解明」については前進しているものの,具体的な結論をだすにいたっていない。来年度の最終年度にむけて,より一層のデータの蓄積が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つのテーマ設定のうち「2.顔料、染料や膠着材の流通」「3.天然顔料の原料となる金属鉱物の産地推定と技術解明」については,いまだ調査情報収集の段階であり具体的な成果は現れていないが,「1.江戸後期から明治初期の絵画資料の材質と製作、流通」については新たな知見をえるなど順調に進展しており,総合的にみて,おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
この後も研究計画のとおり,平成23年度の検討結果に基づき,日本の江戸時代から明治初期に色材を使って製作された絵画(屏風・画帖・画巻・掛幅・泥絵など)、版画(錦絵)、和本(画譜・絵本など)を対象とし,ラマン分光法と蛍光X線分析法などの非破壊分析を用いて製作時に使用された顔料・染料の同定を行う。平成24年度以降は国内外の機関が所蔵する絵画資料について色材の調査および非破壊分析の対象とする。また可能なものについては膠着材および鉛同位体比分析用の試料採取も随時実施する。抽出された資料については,画像分析によって版木・屏風の表面状態(彫りやノミあと、筆あと、繊維など)や混合による化学変化や色彩変化を調べ,その情報に基づいて当初状態を再現画像化する予定である。最終年度となる平成25年度には美術史学的な基本課題に関する検討結果に化学分析・画像分析の結果を加味して検討を行う。3年間の調査研究をもとに「江戸時代から明治初期にかけての絵画資料、特に色材・膠着材などの材料の変遷や、それに伴って絵画に生じた画題など美術上の影響、また海外からの流通を含む原料供給の移り変わりなどについて考察する。
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