2012 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代から明治初期にかけての絵画・版画・和本の色材と制作技術に関する研究
Project/Area Number |
23300327
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
小瀬戸 恵美 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (80332120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (40392550)
永嶋 正春 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (50164421)
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (50205663)
眞鍋 佳嗣 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (50273610)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (60270401)
鈴木 卓治 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (70270402)
高嶋 美穂 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, その他部局等, 研究員 (80443159)
大久保 純一 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (90176842)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 文化財 / 色 / 版木 / 錦絵 |
Research Abstract |
平成24年度は「1. 江戸後期から明治初期の絵画資料の材質と製作、流通」においては分析方法の確立とデータ蓄積をおこない,「2. 顔料、染料や膠着材の流通」「3. 天然顔料の原料となる金属鉱物の産地推定と技術解明」については主として文献による情報収集と試料採取計画を行なった。特に,1、においては分析機器による顔料、染料の自然科学的分析だけでなく,錦絵版木測定用治具を用いて歌川派錦絵版木群のうち「源氏雲浮世画合」を中心として3次元計測による表面調査を本格的に行い,彫りの技術の解明にむけて前進している。また,紫外線‐可視光‐近赤外線領域における分光反射率測定を江戸後期資料を対象としておこなったところ,天然藍とプルシアンブルーの判別を可能とするとともに,近赤外線画像の撮影によってプルシアンブルーとその他青色顔料の判別を可能とした。また、赤色顔料については1869年頃に色相が変化することを確認し,同時期にアニリン赤が普及したとされる美術史における時代背景との一致をみた。 前年度より継続している3次元画像分析による表面状態調査では前年の成果をもとに最適条件の決定を行ない,撮影時間の短縮を可能とすると同時に錦絵の詞書きを判別可能なレベルにまで精度を向上させており、かつ色補正の自動化に成功するなど前進している。 現時点において,3課題のうち「1. 江戸後期から明治初期の絵画資料の材質と製作、流通」については着実に成果がでているが,「2. 顔料、染料や膠着材の流通」「3. 天然顔料の原料となる金属鉱物の産地推定と技術解明」については前進しているものの,具体的な結論をだすにいたっていない。最終年度である平成25度においては,3テーマ全体の総合的考察を行うためにも,より一層のデータ収集が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つのテーマ設定のうち「2. 顔料、染料や膠着材の流通」「3. 天然顔料の原料となる金属鉱物の産地推定と技術解明」については,いまだ調査情報収集の段階であり具体的な成果は現れていないが,「1. 江戸後期から明治初期の絵画資料の材質と製作、流通」については新たな知見をえるなど順調に進展しており,総合的にみて,おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画のとおり,前年度までの検討結果に基づき,日本の江戸時代から明治初期に色材を使って製作された絵画(屏風・画帖・画巻・掛幅・泥絵など),版画(錦絵),和本(画譜・絵本など)を対象とし,ラマン分光法と紫外線‐可視光‐近赤外線領域における分光反射率測定などの非破壊分析を用いて製作時に使用された顔料・染料の同定を行う。また,引き続き平成24年度に一定の成果を得た画像分析による版木・屏風の表面状態(彫りやノミあと、筆あと、繊維など)の情報をより精度の高いものとしていき,デジタルデータによる当初状態の再現画像化に色材の混合や化学変化も加味していく。最終年度となる平成25年度には美術史学的な基本課題に関する検討結果に化学分析・画像分析の結果を加味して検討を行う。3年間の調査研究をもとに,江戸時代から明治初期にかけての絵画資料、特に色材・膠着材などの材料の変遷や、それに伴って絵画に生じた画題など美術上の影響、また海外からの流通を含む原料供給の移り変わりなどについて考察する。
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Research Products
(1 results)