2012 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム領域特異的ヒストンアセチルの誘導によるがん治療法の開発
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23300344
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
永瀬 浩喜 千葉県がんセンター(研究所), 研究局, 研究局長 (90322073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 隆義 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 研究員 (60526060)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エピジェネティク / ヒストンアセチル化 / ピロールイミダゾールポリアミド / ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / 癌 / リプログラミング |
Research Abstract |
ピロールイミダゾールポリアミド(PIP)化合物にHDAC阻害剤SAHAをコンジュゲートした化合物(SAHA-PIP)を合成し、6塩基認識の24種の化合物を合成した。化合物投与後のがん細胞増殖・細胞形態への影響をタイムラプス解析によって観察した。ヒト子宮がん HeLa、膀胱がん T24、乳がん MCF7、MDANB231、すい臓がんPanc1、正常HCE-T細胞株をテストし、化合物OとPがMCF7の増殖を抑制し、MはHCE-Tの増殖を抑制した。しかし明らかな形態変化は見られず、効果の再現性が不確実であっため、次世代型の環状PIP化合物による同様の探索を試みることとした。残念ながら計画していた次世代型の環状PIPとSAHAの効率的な合成には成功していない。随時工夫を加え合成法の検討を継続している。並行して、京都大学との共同研究でマウス線維芽細胞に対する上記ライブラリーの添加実験を行った。SAHA-PIP投与後24時間でマウス線維芽細胞の遺伝子発現パターンを15-25%程度ES細胞に近似させることができる化合物を得、Scientific Reports 2, Article number:544 2012 に報告した。さらに繊維芽細胞を継代し、ES細胞維持用の培養液で維持することにより、マウスでのiPS様の細胞の樹立に成功した。現在ヒト皮ふ由来線維芽細胞に対しても同様のiPS化を試み、iPSへの形態変化を誘導する化合物が得られたため、化学物質によるiPS細胞の誘導に関する特許出願を進めている。さらにこのヒトiPS誘導化合物によるがん細胞への影響をスクリーニングしたが、現状では明らかな山中因子の誘導を起こすがん細胞株および形態変化を起こす細胞株は得られていない。随時研究を継続し、ヒトがん細胞における遺伝子誘導の新たな方法とがん細胞の形態変化の誘導を起こす化合物の探索を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲノムの主な遺伝子のプロモータ領域には、GCリッチな配列が多く見られ、この配列を標的とすることは、従来のPIポリアミド設計では困難であった。我々はこの点を、新規に開発したブロック合成法およびβアラニンの交差構造の導入等により改善してきた。またピロールイミダゾールポリアミド(PIP)のヘアピン構造の問題点からの脱却によりアグリゲーションの問題や配列認識特異性の問題点の改善を図り、配列認識特異性が高くアグリゲーションの問題を解決できる可能性がある環状型PIP(cPIP)の合成に成功し、環状型のPIPもヘアピン型同様に細胞株で遺伝子発現を抑制できることを確認した。この結果は、米国癌学会AACR2013 に採択され、報告した。当初計画していた次世代型のピロールイミダゾールポリアミド(PIP)の合成については、システインを利用したcPIPの合成は可能となったが、両側をγターンでシンメトリックにする合成を試みてきたがこれには未だ成功できていない。cPIPに対するSAHAのコンジュゲートSAHA-cPIPの合成も自動合成機によりコンスタントに合成することには成功できていない。このため、従来型のPIPを用いてSAHAのコンジュゲートを合成することで24種類SAHA-PIPのライブラリーを作成した。当初予定の合成に困難を生じたため全体に計画は遅れているが、線維芽細胞での多能性幹細胞(iPS細胞)様の形態変化の誘導という勇気づけられるデータが出ていることより、従来型を利用することで予定通り癌での表現型にも影響を与える化合物が得られるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
ピロールインミダゾールポリアミド(PIP)とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤SAHAのコンジュゲート(SAHA-PIP)の合成を進めライブラリーを拡充する。従来型を利用したSAHA-PIPでも正常細胞で幹細胞化の効果が得られていることより、従来型ヘアピンPIPによるSAHA-PIPを用いた癌に対する増殖抑制効果、細胞形態変化の誘導を示す化合物の探索をさらに進める。同時に環状型PIPの合成を再度試み、SAHA-cPIPによるライブラリーの作成にもチャレンジする。 また内在性のがん抑制遺伝子の再発現によるがん治療の可能性を模索するために、エピジェネティックに発現が抑制されているがん抑制遺伝子のプロモータを標的にしたSAHA-PIPもしくはSAHA-cPIPの合成を試み、がん治療に利用できる候補化合物の探索を試みる。 がん細胞の増殖抑制や分化誘導を示すと考えられる化合物が得られた場合、その作用起点を同定するために遺伝子発現プロファイル解析を行う。さらに化合物との結合が予測されるゲノム領域のヒストン修飾およびDNAメチル化の状況をデータベース解析、ChIPアッセイやバイサルファイトシークエンス法で検討する。このことで化合物がどのゲノム領域で効果を発揮し、抗がん作用を生み出しているかを検討する。さらにがん細胞株を免疫不全マウスへ移植し、ヒトがんモデルを作成し、化合物の効果を判定・検討する。
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Research Products
(16 results)