2011 Fiscal Year Annual Research Report
特異的免疫反応から始まる癌を拒絶する生体反応の解析
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23300355
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
竹田 和由 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80272821)
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Keywords | NK細胞 / IFN-γ / 肺転移 / 血管閉塞 / 細胞傷害活性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、癌組織内での免疫反応により誘発される癌を拒絶する生体反応を明らかにすることである。免疫による腫瘍拒絶は自然免疫から始まるとされ、特にB16メラノーマの肺転移に対する抵抗性にはNK細胞が重要であることが知られている。本年度は、腫瘍特異的T細胞による固形癌の拒絶モデルと並行して行ったB16の肺転移モデルの解析で、NK細胞の定説とは異なる反応機序を見出した。肺に存在するNK細胞は、血行性に転移してくる癌細胞に対して細胞傷害活性を示すことで肺転移抵抗性に寄与するとされている。今回の多くの遺伝子欠損マウスを用いた実験でもNK細胞の重要性は確認できたが、複数の細胞傷害活性分子欠損マウスやIFN-γ欠損マウスの解析から、B16の肺転移の拒絶にはNK細胞による細胞傷害活性ではなく、IFN-γ産生が重要であることが示された。事実、この研究で使用したBI6に対してNK細胞は有意な細胞傷害活性を示さなかった。肺NK細胞によるIFN-γ産生は静脈投与したB16が肺にformingした直後から観察され、約10時間継続した。そして、このNK細胞のIFN-γ産生に始まる肺からB16を排除する反応には、宿主のIFN-γ反応性が必須であるが、獲得免疫系の細胞の反応ではないことが示唆された。さらに興味深いことに、NK細胞は静脈内に投与したジルコニアビーズの肺への栓塞時にも同様にIFN-γを産生した。従って、B16の肺転移を拒絶する反応は、NK細胞の血管栓塞に対する反応から始まり、NK細胞により産生されたIFN-γに獲得免疫系細胞以外の細胞が反応し、B16が肺から排除されていることが示された。これは、免疫反応の後の免疫反応以外の何らかの生体反応が腫瘍拒絶に重要であることを示唆しており、今後、腫瘍特異的T細胞による固形癌の拒絶モデルを用いて、腫瘍を拒絶する直接の作用機序を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は獲得免疫以前の、癌拒絶の第一反応である自然免疫(NK細雅)の反応の本質を報告したが、獲得免疫による固形腫瘍拒絶の研究でも順調に結果が得られている。そして、最終的な腫瘍の拒絶反応が免疫反応では無いこと、さらには、腫瘍に対する反応ではなく、生理的変化に対する自然免疫の反応から転移した癌の拒絶反応が始まることを示したことは、非常に興味深いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
皮下で増殖した癌を標的とした腫瘍特異的免疫反応から始まる癌拒絶のモデルとして、癌抗原特異的CTLの移入治療による固形癌の拒絶モデルを用いて、免疫組織染色やreal time PCR等により、経時的に癌塊内で起きている免疫反応、血管新生、炎症反応等を解析し、拒絶される癌と治療をエスケープする癌との比較検討を行うことで、癌拒絶に重要な反応の解析を行う。
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Research Products
(8 results)