2012 Fiscal Year Annual Research Report
未利用木質バイオマスを用いた炭素貯留野菜によるCO2削減社会スキームの提案と評価
Project/Area Number |
23310034
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
柴田 晃 立命館大学, 衣笠総合研究機構, チェアプロフェッサー (60425006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 芳恵 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (20342412)
鳥居 厚志 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 研究員 (40353784)
大槻 知史 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (40399077)
高尾 克樹 立命館大学, 政策科学部, 教授 (50143681)
城月 雅大 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 講師 (60532265)
富野 暉一郎 龍谷大学, 政策学研究科, 教授 (70263499)
鐘ヶ江 秀彦 立命館大学, 政策科学部, 教授 (90302976)
藤井 康代 京都学園大学, バイオ環境学部, 准教授 (90434662)
熊澤 輝一 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 助教 (90464239)
田靡 裕祐 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (80619065)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 農地炭素貯留 / 地球温暖化防止 / 持続可能性 / 農村地域開発 / 環境保全型ブランド / 食育 |
Research Abstract |
課題1)竹材の伐採,炭化および農地埋設までのLC-CO2による隔離炭素量の推定と経済コスト評価に関しては,本年度も亀岡市曽我部地区において簡易炭化器を用いた炭化実験を行い,そこで製造された竹炭の炭素量を測定し,農地炭素貯留によって隔離される固定炭素量の推定に必要な基礎データを追加的に得ることができた.また,野焼きに近い方法での炭化実験も並行して実施し,人的・経済的コストの比較評価を行った.さらに,次年度の炭材の確保のために,保津川河川敷において竹林伐採を行った.LC-CO2のシナリオ評価研究については,成果を学術論文にまとめ専門学会誌に投稿した. 課題2)農地が有する炭素クレジットの保証と流通および炭素貯留野菜ブランド規格に関しては,大学,行政,学術団体による炭素貯留運営委員会を組織し,農地炭素貯留の認証と,課題3の炭素貯留野菜ブランドの管理を行う体制を構築し,事務フローを整えた.同委員会は,京都環境行動促進協議会より京都独自クレジット運営機関への指定を受けた.また,炭素貯留野菜ブランド規格に基づいた大納言小豆の栽培実験を行い,圃場の土壌環境や収穫量に対する炭堆肥施用の効果を検証した. 課題3)炭素貯留野菜の消費者による選好評価に関しては,農業者の生産組合を組織化し,地域のスーパーマーケットでの本格的な販売を開始した.ブランド農作物の安定的な供給をすでに半年程度継続しており,ブランドに対する地域住民の認知がある程度広まったと考えられるため,最終年度の課題として,サンプルサイズの大きな調査による消費者選好の分析を行う予定である. 課題4)地域小中学校における炭素貯留野菜を使った給食を通じた食育に関しては,小学校低学年の児童を対象としたアニメーション教材および冊子を制作した.また亀岡教育研究所において,小学校の教職員を対象としたカーボンマイナス・プロジェクトの研修を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画されていた平成24年度のスケジュールは,ほぼ全て順調に消化した.具体的には後述するが,特に地域開発スキームの中核となる組織の立ち上げが完了し,本研究の知見に基づく政策提案の実施可能性が格段に高まったことが大きいだろう. 課題1については,地域内のLC-CO2のシナリオ評価研究が論文としてまとまり,査読付き学術誌への掲載が決まった.本研究が進めている地域開発スキームの環境面における妥当性が定量的な形で証明され,研究のひとつの区切りとしての成果を挙げることができた.また,竹材の伐採から炭化を経て農地への埋設という流れにおける経済的コストの評価に必要なデータも,継続的に蓄積されている.最終年度のデータとあわせて分析を行い,学会報告や学術論文等によって成果の発信をする予定である. 課題2については,地域開発スキームの中核的機能を担う2つの組織を立ち上げることができた.すなわち,農地炭素貯留の認証および炭素貯留野菜ブランドの管理を行う「京都炭素貯留運営委員会」と,ブランド野菜の生産と品質管理を行う「亀岡クルベジ育成会」である.今年度は,これらの組織の活動が始まり,本研究の地域開発スキームを本格的な実施の段階に進めることができた.また,大納言小豆の栽培実験による農地炭素貯留の有効性に関する実証研究も新たにスタートさせ,初年度のデータを得ることができた. 課題3については,地元スーパーにおける炭素貯留野菜ブランドの本格的な販売が始まり,消費者への認知が少しずつ広まりつつある段階にある.すでに店頭での簡単なアンケート調査等は行っているが,より信頼性や妥当性のある知見を得るために,より大規模な量的調査を実施する必要がある.現在,質問紙の内容や対象者について検討をしている. 課題4については,小学校低学年向けのアニメーション教材および冊子の制作と,教職員を対象とした研修を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
課題1については,農地炭素貯留のプロセスにおける経済コスト評価に必要なデータの収集を,これまでと同様に継続して行う.地域の竹林バイオマスの分布と地元住民の希望を勘案しながら,伐採の対象地区を選定し,重機による伐採を行う.得られた竹材を簡易炭化器によって炭化し,固定炭素量を計測した上で,堆肥と混合し農地に埋設する.その際,いくつかのシナリオを設定し,経済的なコストがどのようにかかるのかについてのデータを収集し分析する. 課題2については,既に組織化した上述の団体を基盤として,本研究の知見に基づく政策提案の実践を進める.農地炭素貯留の認証については,課題1の知見に基づく簡易型の固定炭素計測法を活用し,その妥当性についての検証を行う.同時に,ボランティア市場における炭素クレジットの流通や,環境CSRに基づいた企業協賛の獲得を進めることによって,地域内への資金還流のスキームを確立させる.大納言小豆の栽培実験も継続して行い,収量や土壌環境の変化に関する経時的なデータを収集し分析する. 課題3については,炭素貯留野菜という新しいコンセプトを持つブランドの普及可能性を検討するために,消費者意識と購買行動に関する量的調査を行う.すなわち,人々の社会的属性―価値意識―購買行動の関連についての仮説モデルを検証し,どのような顕在的/潜在的顧客層や,購買を支える価値意識が存在するのかについての知見を得ることによって,環境保全野菜の効果的かつ持続的な普及の方向性を明らかにする. 課題4については,地域の小中学校に対して炭素貯留野菜を供給し,給食を通した食育を行う.それと同時に,環境や地域社会の持続可能性といったテーマへの関心を深めるための,食を通したワークショップを実施する. 以上の課題における知見を取りまとめ,農地炭素貯留による農村地域の持続可能な開発スキームの総合的な政策提案につなげる.
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