2011 Fiscal Year Annual Research Report
高密度マイクロアレイCGH法を用いた原爆放射線の遺伝的影響調査
Project/Area Number |
23310042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Radiation Effects Research Foundation |
Principal Investigator |
小平 美江子 財団法人 放射線影響研究所, 遺伝学部, 遺伝性化学研究室長 (60344412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅川 順一 財団法人放射線影響研究所, 遺伝学部, 主任研究員 (10359458)
古川 恭治 財団法人放射線影響研究所, 統計部, 副主任研究員 (00416421)
中村 典 放射線影響研究所, 主席研究員 (00010116)
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Keywords | 原爆放射線の遺伝的影響 / アレイ-CGH法 / 全ゲノムスクリーニング / CNV検索 / 原爆被爆者の家族解析 / 生殖細胞突然変異率 |
Research Abstract |
ヒト生殖細胞における自然発生および放射線誘発突然変異の頻度は極めて低い。従って、信頼度の高い放射線の継世代影響の評価を行うためには、統計的に検定が可能な数の突然変異を検出する必要がある。放射線は主に欠失型突然変異を誘発するので、本研究では、ゲノム全域でのコピー数変異領域(CNV:欠失や増幅)を効率よく検索できる高密度マイクロアレイCGH法を用いて突然変異を検出する。両親と子供のCNVを全ゲノムレベルで網羅的に検出して、子供にだけ存在するCNVを生殖細胞で生じた突然変異と判定する。対象は当研究所においてB-細胞株が樹立されている原爆被爆者の家族(被爆者、その配偶者と子供)のうち被ばく線量が高い被爆者家族184組(子供は320人)である。 アレイデザインや貼り付けるprobeセットの選択を行い、そのアレイを用いて正確で再現性がよい結果が得られる実験条件を検討した。CGH法はリファレンスのコピー数に対して異なるコピー数を持つ領域を検出する方法である。はじめに、再現性がよく、CNVのコピー数が容易に決定できるリファレンスの検討を行った。複数のヒトのDNAを混合して用いる予定であったが、特定の個人のDNAを用いる方が安定した精度の高い結果が得られた。本研究では、全ゲノム配列が報告され、実際のコピー数が分かっている日本人の細胞株(GM18943)由来DNAをリファレンスに使用することにした。 平成23年度は50家族188人の細胞株のゲノムDNAを抽出した。このうち10家族を用い、実際にCNVの検出を試みた。コピー数の異常を示す値(cut-offのためのlog2-値)の設定は偽陽率や偽陰性率に影響する。10家族の解析の結果、ヒトでは個人間のゲノムの違いが大きいので、これまで用いてきたマウスの基準値(±0.4)を見直す必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の最重要課題は、本研究で使用する新しいアレイ(3×1.4Mアレイformat)を用いた実験・解析条件の確立であった。実験条件の調整を行い、probeの蛍光強度比の再現性がよく、同一アレイを使用して複数回のスクリーニング実験が実施できる実験条件を確立することができた。また、本研究に使用する全調査対象者の細胞株の培養情報を確認してクローン化程度の低い培養細胞を選択した後、ゲノムDNAの抽出を始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
コピー数変異の検出基準値(cut-offのためのlog2-value)は、CNVの検出精度(偽陽性率、偽陰性率)に影響するので、検出できるCNVのサイズにも影響する。直面している課題は、3×1.4Mアレイ(NimbleGen社)で得られた画像データから、小さいCNVでも正確に検出できる最適な基準値の設定である。染色体の領域別(バンド構造)のGC%、ヒトに特有な個人差(SNPなど)や重複構造(segmental duplication)に配慮しながら、連続した2つのprobeしか変異しないようなCNVでも検出可能な基準値の設定を行う。 平成24年度から家族解析を行い、新規突然変異の候補の検出を始める。検出した候補CNVの効率よいDNAレベルでの特徴付け、由来する親をSNPなどから同定する解析方法の確立が必要である。ミスマッチ検出法、パルスフィールド電気泳動法、染色体分離による特定領域増幅によるシークエンス、SNP-アレイを用いた解析などいくつかの効率のよい方法の検討を始める。
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