2012 Fiscal Year Annual Research Report
標的タンパク及び糖鎖を光分解する生体機能分子の創製と細胞機能制御への応用
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23310153
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
戸嶋 一敦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60217502)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生体機能分子 / タンパク / 光分解 / ベロ毒素 / ポルフィリン / エイズ / アミロイド / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
「標的タンパク及び糖鎖を光分解する生体機能分子の創製と細胞機能制御への応用」と題した本研究課題の二年目として、疾病関連タンパクを選択的に光分解する新たな生体機能分子を創製した。ベロ毒素1型(verotoxin-1: VT-1)は、腸管出血性大腸菌O-157が産生するタンパク毒素であり、感染後は、出血性の下痢やそれに伴う合併症を引き起こし、最悪の場合死に至ることが知られている。しかし、VT-1に対して特異的な治療法は未だ確立されておらず、効果的な治療法の開発が強く求められている。そこで本研究では、VT-1に対して特異的に相互作用し、人体に無害な光照射下、VT-1を光分解することで解毒する新たな人工生体機能分子のデザイン、合成および機能評価を行った。その結果、本研究で創製したポルフィリン‐Gb3ハイブリッド分子が、長波長紫外光または可視光照射下、標的タンパクVT-1Bを光分解することで、VT-1の毒性を効果的に軽減することを見出した。また、アミロイドβ (Aβ)は容易に凝集し、神経変性疾患であるアルツハイマー病に深く関与していると考えられている。そこで本研究では、Aβの高い凝集性を利用し、Aβと相互作用することで凝集形成を阻害するだけでなく、特定波長の光照射下、Aβモノマー及びオリゴマーを効果的に光分解する新たな人工生体機能分子のデザイン、合成及び神経様細胞を用いた機能評価を行った。その結果、本研究で創製したペプチド-ポルフィリンハイブリッド分子が、その高い凝集阻害活性によりAβの細胞毒性を軽減すること、さらに、人体に無害な長波長紫外光の照射下において、Aβモノマー及びオリゴマーを光分解することで、Aβの神経様細胞に対する細胞毒性を効果的に軽減することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「標的タンパク及び糖鎖を光分解する生体機能分子の創製と細胞機能制御への応用」を目的としているが、本年度において、ベロ毒素及びアルツハイマー病関連タンパクを光分解する生体機能分子を設計、合成し、これらが、酵素及び細胞レベルで効果的に機能することを示せたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、引き続き疾患関連タンパクを選択的に光分解する生体機能分子の設計、合成及び機能評価を行うことに加え、疾患関連糖鎖(シアル酸やKDOなど)を標的とし、これらを標的選択的に光分解する生体機能分子の設計、合成を行い、機能評価を行うことで、試験管内のみならず、細胞系において有効に機能する新たな光感受性の生体機能分子の創製を目指す。尚、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での大きな問題点は現時点ではない。
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Research Products
(22 results)