2012 Fiscal Year Annual Research Report
組織ペプチドーム解析を可能とする技術開発と新規生理活性ペプチドの探索・同定
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23310155
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
南野 直人 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50124839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 一樹 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80260313)
望月 明和 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (30589601)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ペプチドーム解析 / 生理活性ペプチド / 内在ペプチド / 分解ペプチド / 分解ペプチド標識法 / 質量分析 / ペプチド / プロセシング |
Research Abstract |
組織ペプチドームを解析できれば、生理活性ペプチド等の探索の有効なリソースとなるが、タンパク質の分解ペプチドと内在ペプチドとが識別できず、研究の進展を阻害している。本研究では、内在/分解ペプチドの識別法を作成し、組織ペプチドーム解析を実施可能とする。 昨年度の研究で、標識試薬の脱離は、分離・保存条件を管理すれば少なく、包括解析が可能なことを確認した。一方、標識条件の設定が困難で、標識試薬と組織をホモジナイズ後、消化酵素を熱処理した際(失活処理)は、分解ペプチドに高い標識率が観測された。細片化組織を標識試薬と4℃で浸漬後、失活処理、解析した結果では、標識率は低かった。標識試薬の細胞内移行率の低さが原因と考えられたため、加温・振盪、灌流などの条件を検討したが、ホモジナイズ時の1/10程度で、細胞死由来と考えらる標識ペプチドが増加した。 培養細胞(神経内分泌細胞など)による検討では、試薬と完全に反応できる培養細胞上清でも標識率が低い上、消化が推定されるペプチドでも標識率が低く、細胞内で既に消化されている可能性が示唆された。細胞自身についても、反応時間に相関し標識率は上昇するが、細胞内タンパク質由来ペプチドに比して分泌タンパク質由来ペプチドの標識率は一般に低く、試料調製時の分解による標識が示唆された。これらを踏まえ、標識率が低くとも分解ペプチドとの判定が適切と考えられた。 組織ペプチドーム解析が進められないため、暫定的にペプチド含量が非常に高い下垂体中様を、標識試薬存在下で切除、抽出し、主要なPOMC由来ペプチドが非標識であることを参照しつつ、ペプチドの網羅的解析、同定を行い、非標識ペプチドのリスト化を進めた。 スクリーニング法については、アポエコーリンマウスを導入し、タンパク質発現レベルが高い系統を確保した。培養細胞を用いた数種の評価系について稼働状態とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養細胞を用いた事前検討では標識試薬の細胞内移行は速いと推定されたが、温度を下げた状態では培養細胞でも組織でも移行率が悪いことが判明した。これが最大の問題点であるが、24年度までの研究により、以下のことが明らかとなった。(1)細胞や組織を標識試薬とホモジナイズなどにより一斉に撹拌する場合は、混合以降に起こる消化・分解反応は正確に検出できることが確認された。細胞培養上清についても、同様に標識試薬との混合が完全に実施できるので、有用性は確認できた。(2)細胞培養上清のペプチド解析結果より、分泌以前に正規の切断部位以外の消化・分解が、細胞内でも既に一部で起こっていることが推定された。(3)培養細胞については、標識試薬と長時間と加温し、細胞内に十分に移行すれば標識率は上昇するが、分泌タンパク質由来ペプチドと細胞内タンパク質由来ペプチドとで標識率が異なる可能性がある。人為的な細胞回収、抽出作業中の変化は明確に検出、排除でき、これがタンパク種による標識率の違いに反映している可能性がある。(4)組織については、標識試薬の細胞内移行が一般に困難であり、37℃条件で加温時間を長くすれば、細胞の壊死による標識が増加する。抽出作業開始以降の消化・分解は,標識により検出可能である。 以上より、標識試薬の移行率も含めたペプチド標識率は当初予想よりも低く、標識率は対象となる細胞や組織、またタンパク質の局在や分泌制御系によっても異なるため、標識率による分解と内在の識別は困難と考えられた。むしろ、低い標識率であっても、標識されたペプチドは全て分解ペプチド(あるいはその可能性が高い)との判定が適切と考えられた。 ペプチドの活性評価などのスクリーニング法については、準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の方針に従い、残り1年間の研究を推進して、当初目標の達成を目指したい。 実績の概要に記した通り、標識試薬の細胞や組織移行率は温度が低いと低く、高いと上昇するが、逆に温度が高いと細胞の壊死も増加するので、各組織に適した温度、時間を設定し、その後、組織を回収する。また、標識率による内在/分解の識別は困難であり、有意な標識が確認されたペプチドは、全て分解ペプチドの判別とする方針とする。少なくとも、組織や細胞の回収時以降の分解は標識試薬の導入により明確に識別できることが確認されたので、標識試薬の有用性は間違いがなく、実際のペプチド解析結果を通じて標識率の意義を検討していく方針とする。 一方、対象組織の予備的検討を23、24年度に行ったが、ラット組織では組織重量、タンパク質量に対して、下垂体中葉、次いで後葉でペプチド含量が非常に高く、脳(視床下部)、副腎髄質、心房にはペプチド量が少ないことが判明した。下垂体後葉ではバソプレシン前駆体由来ペプチドが圧倒的で、下垂体中葉にはPOMC由来ペプチドが多いものの、他のペプチドホルモン前駆体も多数検出された。そのため、24年度に下垂体中葉が実験検証には最適であると判断し、解析を開始した。標識試薬存在下で実施した下垂体中葉のペプチドーム解析を推進し、内在ペプチドリストより未同定の生理活性ペプチド候補を見出し、合成ペプチドについてアポエコーリンマウスの組織、培養細胞を用いた評価系で活性の有無を判定し、活性ペプチドの発見へと結び付けたい。 一般細胞(構成的分泌細胞)の培養上清における分泌ペプチドーム解析については、対象細胞を既に決めており実施できる状況にあるが、上記の下垂体中葉の組織ペプチドーム解析と生理活性ペプチドの同定に先ず専心し、余裕があれば着手する計画としたい。
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Research Products
(9 results)