2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320036
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
Principal Investigator |
松本 伸之 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (30229562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (20249915)
澤田 むつ代 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (40215918)
伊藤 信二 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (00443622)
沖松 健次郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (30332133)
和田 浩 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (60332136)
安藤 香織 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (20555031)
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Keywords | 高雄曼荼羅 / 両界曼荼羅 / 密教美術 / 美術史 / 空海 |
Research Abstract |
高雄曼荼羅(京都・神護寺所蔵)は大画面に描かれた本格的な両界曼荼羅として最古であるが、空海の指導の下、彼が中国から請来した曼荼羅を写したという点でも、思想・美術史上極めて重要な作品である。本研究は、その研究推進を図るために、最先端の撮影技術を用いた高精細デジタル画像および赤外線画像の撮影を全面的に行い、さらに新たな高雄曼荼羅研究の端緒と成せるよう、研究者それぞれが絵画・彫刻・工芸等の専門性を生かし、空海と彼を取りまく仏教美術を考察するのに重要と思われる観点を取り上げて調査・研究を行うものである。 この平成23年度研究費では、高雄曼荼羅2幅について、高精細デジタルカラーおよび赤外線の撮影を行った。カラー撮影は解像度8000万画素、赤外線撮影は解像度4000万画素の高性能デジタルカメラを使用し、各幅それぞれカラー315カット、赤外線432カットを撮影した(合計747カット)。この撮影作業と平行して、絹の状態や絵画技法など細部の観察をし、必要に応じて部分の拡大写真を撮影した。これらの撮影画像は今後の研究の基礎資料になる。 また本研究では、高雄曼荼羅の調査を端緒とし、高雄曼荼羅のもととなった所謂「根本曼荼羅」の解明につながるような研究を目指しているため、本年度は、空海が滞在し根本曼荼羅を賜った西安において調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高雄曼荼羅2幅を、全画面にわたって高精細デジタルカラーおよび赤外線の撮影を行った。これによって大画面のため見ることのできない画面を肉眼で見る以上に詳細に観察することができるようになった。ただし全体を分割撮影しているため、画像の合成を行わなければならないが、その作業が完了していないので、来年度以降も作業を継続する必要がある。 西安での調査では、西安碑林博物館、陝西歴史博物館、西安市博物院などで関連作品の調査を行うと同時に、青龍寺や春明門跡、法門寺、興善寺など空海や密教に関連する事跡を追う事にも努めた。特に西安碑林博物館では、金剛像をはじめとする安国寺跡出土の石彫仏像11躯や、経咒画2件(いずれも唐代、7~10世紀)など重要作品を仔細に調査することができた。このほか、同時代資料を多数調査することができ、高雄曼荼羅と根本曼荼羅を考察するのに有効な資料を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
高雄曼荼羅を分割撮影した画像の合成作業を引き続き行う。 高雄曼荼羅が描かれた9世紀に日本で製作された彫刻や工芸等の作品の調査を実施し、高雄曼荼羅が日本美術に及ぼした影響について検討する。 高雄曼荼羅は中国作品を忠実に模写した作品であるので、中国で製作された彫刻・工芸品と高雄曼荼羅の関連についての検討を行う。日本国内に所在する中国作品の他、九世紀の建築と彫刻が残る中国の五台山等への調査旅行を実施する。
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