2012 Fiscal Year Annual Research Report
上海租界劇場文化の歴史と表象-ライシャム・シアターをめぐる多言語横断的研究
Project/Area Number |
23320050
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大橋 毅彦 関西学院大学, 文学部, 教授 (60223921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 泰子 中央大学, 文学部, 教授 (00282509)
井口 淳子 大阪音楽大学, 音楽学部, 教授 (50298783)
藤田 拓之 同志社大学, 人文科学研究所, 嘱託研究員 (80572297)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ライシャム・シアター / 蘭心大戯院 / 上海租界 / ル・ジュルナル・ド・シャンハイ / 法文上海日報 |
Research Abstract |
平成24年度における研究活動は、フランス国立図書館・京都大学図書館・上海図書館分館所蔵のものをそれぞれ活用して、仏語新聞「ル・ジュルナル・ド・シャンハイ」から見えてくるライシャム・シアターと上海租界劇場文化との関わりを明らかにすることに力点の一つを置いて実施した。その内実を記せば5・8・12・平成25年2・3月に開催した5回の研究会において、各自が同紙の記事をもとにした調査報告を行うとともに、前年度に1941年度分をケーススタディとしてとりかかった同紙掲載ライシャム・シアター関連記事細目作成作業を、その前後の時期にまで延ばしてデータの蓄積と分析とを図った。その結果、とくに音楽芸術活動の分野で、フランス人教育家C・グロボアがライシャム・シアターに熱い関心を注ぎ続けていたことなどをはじめとする、興味深いテーマや問題系が発見された。そして、これらの成果の一部に関しては、年度の中間で共同論文のかたちとしてまとめるとともに中国語に翻訳して国内外に向けて発信する動きをとった。 一方、ライシャム・シアターの活動実態やそれをとりまく租界の文化行政の動態にアプローチするために、「ル・ジュルナル・ド・シャンハイ」以外の史資料にもあたった。英字新聞「ノース・チヤイナ・デイリー・ニュース」、露語新聞「スロボ」・「ザリヤ」などがその主なものであるが、こうした調査によっても1930年代中ごろの映画主流の租界劇場文化の趨勢の中にあってライシャム・シアターの持つ特異性が確かめられた。その他、本研究課題と関連する調査研究を恒常的に行っている日本上海史研究会をはじめとする他の研究会や研究所、個々の研究者との学術的交流にも意を払い、有益な情報交換にも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1930年代から40年代前半にかけてのライシャム・シアターにおける芸術活動を把握するためには、最も重要な資料でありながら、国内外においてこれまでほとんど注目されてこなかった仏語新聞「ル・ジュルナル・ド・シャンハイ」を活用した共同論文を、3年間の研究期間のほぼ折り返し地点でまとめることができた。また、この成果の発表先としている上海音楽学院との連携も密になり、平成25年度には同学院関係者も招聘してシンポジウムを開催する準備にとりかかることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
「ル・ジュルナル・ド・シャンハイ」の記事およびそれと相互参照のかたちをとって進める他の新聞資料の調査をもとにして、各自が本研究課題につながる問題関心を深めていき、平成25年9月に予定している本研究会主催の国際シンポジウムにつなげていく。そのシンポジウムの結果はシンポ終了後半年から一年以内に活字化して出版する予定。また、ライシャム・シアター関連記事の細目作成に関しては、「ル・ジュルナル・ド・シャンハイ」の場合はすでに1930年代から40年代前半にかけてのデータ処理を完了しつつあるが、シンポジウム終了後には、これと同様の調査を他の新聞資料にたいして各自が進めてきた調査結果を持ち寄り、それらを束ねた第三代(1931~1945)ライシャム・シアター上演演目に関する網羅的・総合的年表を軸とする研究書の刊行に踏み切る態勢をを整える。
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