2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
大谷 節子 神戸女子大学, 文学部, 教授 (90211797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 実継 神戸女子大学, 文学部, 教授 (60164563)
高妻 洋成 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 保存修復科学研究室, 室長 (80234699)
宮本 圭造 法政大学, 能楽研究所, 准教授 (70360253)
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Keywords | 金春家 / 片山家 / 金剛大夫 / 翁面 / 揖宿神社 / フーリエ変換赤外分光分析 / 熱分解ガスクロマトグラフィ質量分析 / テラヘルツ分光イメージング |
Research Abstract |
金春家所蔵面の継続調査が完了し、金春家旧蔵面と合わせて、金春家伝来面全体の調査を完了した。金春家伝書、金春家書上との対照作業を進め、データベース作成のための基礎データを蓄積した。片山家所蔵面については、第二回目の継続調査を進めることができ、尉面を完了し、女面の一部の調査を終えた。大阪府八尾市の文化財指定を受けた個人所蔵面の調査では、翁面・三番叟面・父尉面三面の裏面に共通する戦国期の墨書に加えて、「金剛大夫」の銘を赤外線撮影によって判読することができ、面の伝来の解明の大きな手がかりを得ることができた。なお、その成果は、2012年4月と6月に、八尾市立博物館主催の講座において発表する。狂言共同社所蔵面、三井文庫所蔵面、野田神社蔵面については、熟覧調査のみであるが、今後の調査の足がかりを得ることができた。福井県勝山市村岡町滝波お面さん祭、同市谷地区お面さん祭に使用される面調査にておいては、農耕儀礼と翁面の関係を考える上で、示唆に富む事例を観察することができた。鹿児島県揖宿神社の調査では、同社で行われた神舞(神楽系芸能)に用いられた仮面の調査を行ったが、従来江戸後期の作と見られていた四面が、江戸時代以前に制作された面である可能性があることが、尉面・姫面・狂言面との共通性から推測される。九州には八代市に伝来する黒色の仮面も含め、猿楽面の創出、展開を考える上で貴重な作例が見られることが確認できた。なお、木造文化財の彩色の分析において、フーリエ変換赤外分光分析と熱分解ガスクロマトグラフィ質量分析により、漆塗装、膠塗装および油系塗装の判別をおこなうことが可能となった。この手法により、能面などの彩色の材質分析を精度よく実施することができるようになり、テラヘルツ分光イメージングにより、彩色文化財の塗装構造を非破壊で調査できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、交付金の三割の支給が不確実であったため、海外調査の計画を立てることができず、海外調査を断念したが、一方で、国内の調査を充実させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた九州地方における仮面の多様性に注目し、今年度も九州地方の同種の仮面調査を続行し、仮面史における位置づけを試みることとしたい。また、新しく開発されたフーリエ変換赤外分光分析と熱分解ガスクロマトグラフィ質量分析によって可能となった漆塗装、膠塗装および油系塗装の判別手法を用い、能・狂言面の彩色の材質分析の精度を高め、テラヘルツ分光イメージングによって可能となった塗装構造を非破壊調査も行っていきたい。
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Research Products
(5 results)