2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320056
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
大谷 節子 神戸女子大学, 文学部, 教授 (90211797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 実継 神戸女子大学, 文学部, 教授 (60164563)
宮本 圭造 法政大学, 能楽研究所, 准教授 (70360253)
高妻 洋成 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 保存修復科学研究室, 室長 (80234699)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 能面 / テラヘルツ分光イメージング / 伊和神社 / 清水寺 / X線ラジオグラフィ / 近赤外線画像撮影 / 蛍光X線元素分析 / 赤外分光分析 |
Research Abstract |
国内調査では、岐阜県関市春日神社所蔵面、天河弁財天社所蔵面、金剛家所蔵面、尾山神社所蔵面江沼神社所蔵面、金沢能楽資料館所蔵面、滋賀県興敬寺所蔵面、三重県賀多神社所蔵面(再調査)、島根県安来市清水寺所蔵面、岐阜県富加町伊和神社所蔵面、立花家史料館所蔵面の調査を行い、海外調査では、ドイツのハイデルベルグ民族学所蔵面、ケルン東洋美術館所蔵面、ケルン大学演劇研究所所蔵面の調査撮影を行い、データベースの基礎データの採集を行った。 島根県安来市清水寺所蔵面は石見地方の芸能伝承について考える上でもきわめて重要な作例であるが、中世に遡る古面の可能性が高く、今回の調査で同一の作者と見られる面が複数あることが明らかになった。岐阜県伊和神社所蔵面は田の神祭りの「翁」に用いられ、「木造能面べし見」の名称で町の指定文化財に指定されているが、今回の調査によって能面の定型的なべし見面とは異なる点が多いことが判明した。 天河弁財天社所蔵面の内、十郎元雅奉納の尉面について、顕微鏡観察、近赤外線画像撮影、X線ラジオグラフィ、蛍光X線元素分析ならびに赤外分光分析をおこない、墨書の解読の他、能材が寺伝に等しくクスノキであること、彩色の材料として、黄土、胡粉、辰砂、鉛丹、鉛白の存在が示唆されること、展色剤には膠が用いられていること、植毛部分の穿孔の詳細な画像が明らかとなった。なお、能面の塗装構造を正確に把握するための研究として、キトラ古墳壁画調査で有効であったテラヘルツ分光イメージングを適用したところ、能面の彩色層の剥離が生じている部分を明瞭にとらえることができた。未発表ではあるが、下地に鉛白が施され、後世に胡粉で修理が施された能面に対して、テラヘルツ分光イメージングを適用したところ、当初の鉛白が残存する部分を明瞭にとらえることができ、テラヘルツ分光イメージング技術の有効性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、海外調査を含む十数箇所での調査撮影を完了し、貴重なデータを加えることができた。また、、ドイツでは、ドイツの研究者との交流ができ、今後のドイツ国内の調査への足掛かりを作ることができた。また、天河面では複数の科学的調査を行うことが許可され、多くの知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度のドイツでの研究交流を軸に、ドイツ国内の他の所蔵機関の調査を続行する予定である。 研究会を定期的に行い、これまでの調査データの点検を進める必要がある。
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Research Products
(7 results)