2011 Fiscal Year Annual Research Report
デジタルアーカイヴズと英国初期近代演劇研究―劇場、役者、印刷所を繋ぐネットワーク
Project/Area Number |
23320059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 行夫 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30092927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
英 知明 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (60218518)
山下 孝子 鹿児島国際大学, 経済学部, 准教授 (70224623)
田中 一隆 弘前大学, 人文学部, 教授 (10227126)
辻 照彦 新潟大学, 人文社会教育学系, 准教授 (30197678)
石橋 敬太郎 岩手県立大学, 盛岡短期大学部・国際文化学科, 教授 (80212918)
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Keywords | デジタル・アーカイヴズ / 英国初期近代演劇 / 劇場 / 役者 / 印刷所 / プロット構造 / サイモン・ジュエル / 観客 |
Research Abstract |
本研究の主たる目的は、英国初期近代の演劇作品および当時の役者・劇団・劇場の総合研究を「歴史実証主義的立場」から新たに検証し直すことである。最大の特徴は、デジタル・アーカイヴズ(=digital archives:電子データ資料[database]を集積・保管する書庫)を多用し、定説と考えられてきた既存の概念・理論を、現存する公文書や有力な歴史的基礎資料を根幹とした「検証可能な方法」で再検討し直す点にある。それにより当時の劇作家、幹部俳優、劇場所有者、印刷出版業者等をはじめとした「演劇世界全般の相関的ネットワーク構築」の特徴的なありようを、エリザベス朝研究会の総力を結集して追究する。 平成23年度は「演劇作品の成り立ち-マニュスクリプトから印刷本へ-」のテーマのもと、劇作品の構造を手稿本から再度検証し直し、悲劇の構成要素、マルティプル・プロット戦略、stagedirectionや観客の視点等を分析することであるが、本年度はこの目的をほぼ達成したと判断している。具体的には、近代初期演劇の顕著な特色の一つであるプロット構造の複合性が、英国初期近代演劇の観客の(政治的な文脈も含む)視点を巧妙に取り込むために機能していたことが解明された。さらに、デジタル・アーカイヴズから女王一座の役者であったサイモン・ジュエルの遺書を購入し、これまでまったく知られていなたかった英国初期近代演劇の役者、劇場関係者等の人間関係について新知見を得ると同時に、当時の演劇の地方公演の実態を解明する新しい手がかりも得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国初期近代演劇の劇場、役者、観客、上演の実態について、複数の新しい知見を得たことから、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
○平成24年度:「劇場・劇団の興隆と役者の登場-16世紀後半の演劇受容について-」。小規模なアマチュア演劇集団からロンドンの大規模劇団へいたる諸劇団の結成と離合集散、さらに大学才人や有名作家の劇作品の特徴について、16世紀後半から17世紀を中心に再検証する。 ○平成25年度:「演劇界のネットワーク構築-劇作家と貴族、パンフレット、バラッドについて-」。ローズ劇場経営の実践や、貴族の庇護とプロテスタントの反発、劇団の地方公演の実態、パンフレットやバラッドの出版と演劇への影響関係等を、現存する資料から再考察する。 ○平成26年度:「英国初期近代演劇のマイノリティ-無名な劇団と劇作家、観客たち-」。文学史に現れにくいマイナーな劇作家と作品、また無名の観客が残した観劇記録、地方巡業の記録などに依拠し、興隆する初期近代英国演劇の「底流」の考察を通し、「本流」の再考察を行う。
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Research Products
(13 results)