2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23320080
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中川 裕 千葉大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (50172276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 優子 札幌大学, 文化学部, 教授 (30405625)
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Keywords | アイヌ語 / 危機言語 / 音声資料 / 辞書 / 文法記述 |
Research Abstract |
アイヌ語教材を多数刊行してきた映像作家、故片山龍峯氏が1996年から2002年にかけて、北海道鵡川町在住の新井田セイノ氏および吉村冬子氏から採録した、約150時間のアイヌ語音声記録について、デジタルデータ化を行った上で聞き起こし作業を行う。そこから各単語や短文に対応する音声データを切り出し、各表現と対応づけ、音声データベースの形式にして日本語-アイヌ語辞典を作成する。 また、そのデータから、鵡川方言の音韻、アクセント、形態論および統語論的な特徴について記述する。特に隣接する沙流方言や胆振地方の方言などとの対照から問題になるような、方言的に差異の見られる特徴に重点を置く。これらの文法記述に基づいて、現在のアイヌ語学習運動に寄与するアイヌ語教材となるような、鵡川方言の文法概説を作成する。 現在アイヌ語を母語として流暢に話せる話者の数はごくかぎられており、このような過去に収録された音声資料の活用が、近年の重要な研究課題となっている。その中でも同資料は、アイヌ語に深い造詣のある採録者によって、アイヌ語辞書作成を目的として系統的に収録された資料であり、研究素材として重要であるだけではなく、同資料から音声データ付き辞書や文法概説書を作成することは、アイヌ語保存・復興運動にとっても大きな価値を持つ。 特に話者である吉村冬子氏が今なお健在であり、追調査が可能であるという点でも、本資料は他の資料には求めるべくもない好条件を備えており、その分析には緊急性が求められる。 また本資料の聞き起こし作業には札幌大学の学生を研究協力者として起用しているが、その中には同大のウレシパ奨学生制度によるアイヌ人子弟の学生が含まれており、本研究の実施そのものが、アイヌ語の継承活動に寄与していることも、特筆すべき部分である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は150時間分の音声テープすべてをデジタル化した上で、その半分強の約90時間分について、聞き起こし作業を完了している。2年目までですべてのテープの聞き取りを終え、データベース化するという目標から見て、順調な進行と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は引き続き残りのテープの聞き起こし作業を行い、すべてのテキスト化を完了する。それと並行して、各単語や短文に対応する音声データの切り出し作業を行い、順次データベース化していく。本年度末までにアイヌ語部分のテキストに対応する音声の切り出しを終えることが目標である。
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