2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国語文法史の歴史的展開――構文と文法範疇の相関的変遷の解明
Project/Area Number |
23320082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 克也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (10272452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 英樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20153207)
木津 祐子 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90242990)
松江 崇 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (90344530)
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Keywords | 中国語 / 歴史文法 / 存在文 / レファランス / 知覚的存在表現 / 概念的存在表現 / 敦煌変文 / 日本古写本仏典 |
Research Abstract |
平成23年度は、「存在文」とレファランス範疇を共通テーマに設定、各分担者がそれぞれの時代におけるコーパスを分析し、下記の成果が得られた。 木村は現代中国語の「存在文」を中心に観察と考察を進め、従来「存在文」の名で一括されてきたタイプの構文が、実は、知覚的な存在事象を述べるタイプと概念的な存在事象を述べるタイプに二分されることを明らかにし、それぞれの意味と構造を、〈所有〉を表す"有"構文との関連において明確に特徴づけることに成功し、その成果を下記の雑誌論文において公表した。 大西は、上古中国語の「存在文」を"有"構文を取り上げ、上記木村の言う知覚的なタイプが概念的なタイプからの拡張によって成立したことを論証し、下記雑誌論文に公表した他、上古中国語のレファランス範疇がどのように体現されていたのかに関する考察を進めた。 木津は、中国宋代口語資料『朱子語類』に出現する「存在文」の構文上の特徴を調査し、その特徴が中国語文法史において如何に位置づけられるかを考察した。また、琉球で編纂された中国語教科書の否定文形式から、琉球で学ばれた中国語の諸特徴を考察し、さらに江戸時代長崎と琉球の中国語教科書の動詞・介詞「把」の用例分析から、それが中国南方諸方言に通ずる構文上の特徴を有することを明らかにした。 松江崇は、中古漢語の重要な資料である敦煌変文(『降魔変文』)について、主語位置・目的語位置の名詞句のレファランスを、不定表現を中心に記述し、唐代のレファランスを論じた先行研究を批判的に検討した。さらに日本古写本仏典の中古資料としての価値に注目し、金剛寺本『六度集経』を利用し、疑問代詞体系の記述を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記実績の概要に記したとおり、当初の計画通り、「存在文」ならびに「レファランス」範疇に関して、各分担者が順調に成果を挙げているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続き、各分担者は担当する時代のコーパス調査を進め、特にレファランス範疇に関する研究を重点的に進める予定である。分担者及び研究協力者による2回の集中討議、並びに外部の研究者を招いて研究課題に関するミニシンポジウムを計画しており、これまでの研究成果、方法に対する助言を求めつつ、研究のレベルアップを図ることを計画している。
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Research Products
(13 results)