2011 Fiscal Year Annual Research Report
印欧語史的動詞形態論研究の新展開:アナトリア諸語の役割
Project/Area Number |
23320084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 和彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (90183699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大城 光正 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (40122379)
森 若葉 京都大学, 総合地球環境学研究所, プロジェクト上級研究員 (80419457)
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Keywords | 印欧語 / ヒッタイト語 / 楔形文字ルウィ語 / 象形文字ルウィ語 / リュキア語 / アクセント / モーラ / 歴史比較言語学 |
Research Abstract |
平成23年度に得られた最大の具体的な研究成果は、ヒッタイト語、楔形文字ルウィ語、象形文字ルウィ語、リュキア語などの共通基語であるアナトリア祖語において、アクセントを担う基本的な単位が音節ではなく、モーラであったことを歴史比較言語学的な観点から示したことである。話し手のいない文献言語から、プロソディーについての情報を引き出すことは決して容易でない。プロソディーについての情報が文字によって書き残されていることはまれであるからである。しかしながら、文献言語の場合においても、プロソディーについての情報を導き出すことは決して不可能ではない。本研究では、アナトリア祖語の時期に生じた子音の弱化および語末の-rの消失という、一見したところ無関係な別個の2つの音法則にみえる現象に対して、モーラという観点から整合的で例外を許さない説明を施した。すなわち、アクセントのある長母音をはじめのモーラにアクセントのある2モーラ連続と再解釈することによって、直前のモーラがアクセントを有しない場合に、子音は弱化し、また語末の-rは消失すると解釈することができる。なおこの研究成果はイギリス言語学会雑誌Transactions of thePhilological Society 109/1 (2011)に掲載された。 さらに印欧語動詞形態論やアナトリア文献学の面でも、いくつかの重要な知見を引き出すことができ、ハーバード大学、国立民族学博物館、ワルシャワ大学など開催された国際学会の場でその成果を発表した。それらは近いうちに印刷されることになるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献資料の整理・分析という基礎作業が順調に進み、その作業に基づく成果が雑誌論文や研究発表というかたちでいくつか公表された。研究発表に基づいてまとめられた論文も今後雑誌論文に発表する予定である。以上より、おおむね順調に研究計画が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
楔形文字資料や象形文字資料の整理・分析という文献学的作業を継続するとともに、今後は比較言語学的な立場からの解釈にもいっそう力を注ぐことを考えている。
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Research Products
(10 results)