2011 Fiscal Year Annual Research Report
西日本における中世石造物の成立と地域的展開-石材と形態・様式に着目して-
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23320138
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
市村 高男 高知大学, 教育研究部・総合科学系, 教授 (80294817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
先山 徹 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (20244692)
佐藤 亜聖 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40321947)
高津 孝 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (70206770)
福島 金治 愛知学院大学, 文学部, 教授 (70319177)
桃崎 祐輔 福岡大学, 人文学部, 教授 (60323218)
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Keywords | 中世の石造物 / 石材産地 / 形態編年 / 宋風石造物 / 半島風石造物 / 畿内系石造物 / 流通と交流 |
Research Abstract |
研究会の1回目は奈良市で開催した。畿内系石造物を実見し、(1)鎌倉期から花崗岩を石材とする優品を制作しており、(2)石材加工技術は当該期日本の最先端を示すこと、(3)鎌倉・南北朝期の遺品は権力者の特注品であり、(4)15世紀以降、一石五輪塔など小形石造物の大衆化が開始されることを確認した。 これを踏まえ、畿内系石造物の流れを汲む日引石・伊根石・由良石製の石造物及び石材産地の調査を行った。いずれも若狭湾・丹後湾沿岸で産出する石材で造られ、南北朝期以降、日本海沿岸地域に伝播するため、加工技術の相互関係や消費地の獲得競争が問題となってくるが、意匠や形態編年の検討を深めることによって、技術の系譜や時代・地域による消費地の棲み分けが明らかできることが分かってきた。 研究会の2回目は長崎県平戸市で実施した。薩摩塔など宋風石造物や碇石、花崗岩・結晶片岩・日引石など多様な石材で造られた石造物を調査し、平戸島が石造物流通の回廊であったこと、多数の宋風石造物がこの島にあることの意味、輸送経路についての多面的考察の必要性を共有した。 宋風石造物や碇石の調査は、九州グループが中心となって徹底的追跡調査を行い、これまでに知られた事例すべての形態や石材に関するデータを採り、さらなは新事例も発見するなど大きな成果を上げ、石造物から東アジアの文化交流の実態に迫る研究方法を提示しつつある。 また、石造多層塔を中心とする韓国の石造物調査を2回実施し、百済・高麗等の石材加工技術が日本の層塔に影響を与えていることが分かってきた。国内でも西日本各地の調査を進める過程で、山陰・北陸方面に半島風石造物が点在するとの情報が集まっている。日韓石造物の比較研究の道が開けつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国の調査は先送りすることとなったが、宋風石造物や碇石の調査がかなり進展したとと、手探り状態で開始した韓国石造物の調査が想像以上に成果を上げたこと、各地で石造物調査の意義が理解されるようになってきたことなどによる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実現できなかった中国漸江省・福建省方面の調査を実施し、薩摩塔や碇石の石材として知られる梅園石のほかに、日本国内に残る宋風石造物の石材の種類とその産出地を探り、文字史料では見えない日中の文化交流の実態に迫る。また、韓国石造物の補足調査と、国内に残る半島風石造物の調査を進め、日本における石材加工技術の系譜論に新たな光を当てる。さらに国内の調査では、結晶片岩に着目し、板碑に加工する阿波、五輪塔・宝篋印塔に加工する肥前、石塔加工の指向性を持たない伊予、という石材・石塔認識の相違とその意味を考え、石造物から見た地域の個性に迫っていく。花崗岩についても瀬戸内海沿岸地域の調査を進め、畿内系花崗岩石造物と芸予系花崗岩石造物の技術系譜の相違や関連性について検討する。
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Research Products
(11 results)