2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代ヨーロッパを中心とする空間的移動の実態と移動の論理に関する比較史研究
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23320164
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
北村 暁夫 日本女子大学, 文学部, 教授 (00186264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (00272774)
青木 恭子 富山大学, 人文学部, 准教授 (10313579)
木村 真 日本女子大学, 文学部, 研究員 (20302820)
一政 史織(野村史織) 中央大学, 法学部, 准教授 (20512320)
山本 明代 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (70363950)
平野 奈津恵 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60634904)
杉浦 未樹 東京国際大学, 経済学部, 准教授 (30438783)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(オランダ) / 国際情報交換(イタリアなど) / 近代ヨーロッパ / 空間的移動 / 亡命 / 日常的実践 / ネットワーク / アソシエーション |
Research Abstract |
本研究は、17世紀から20世紀前半までの近代ヨーロッパにおける、さまざまな形態の空間的な移動(国内移動/ヨーロッパ諸国間の移動/大陸間移動、経済的な移民/政治亡命/難民)を対象として、移動する人々を移動という行為を実践する行為主体として捉えた上で、移動をめぐる論理を明らかにすることを目的としている。 二年目にあたる平成24年度は、三回の研究会と一回の国際シンポジウムを実施した。第1回研究会(2012年7月7日開催)では、「北フランス炭鉱都市におけるベルギー移民」と「1908年メッシーナ大震災とシチリア移民の移動の論理」の二つの報告が行われ、安定した居住環境を求めて移民する人々の移動の論理や自然災害が人間の移動の形態に与える影響をめぐって具体的な事例に基づく議論が展開された。第2回研究会(2012年12月8日)では、招聘が決定していたオランダ・ライデン大学レオ・ルカッセン教授の諸論考を読み合わせることで、氏の移動の論理に関する基本的な考え方を確認した。ルカッセン教授を招いて行った第3回研究会(2013年1月25日)では、参加者全員が各人の研究の概要を簡潔に報告することで、近代ヨーロッパにおける移動の論理をめぐる意見交換を行い、問題関心と研究動向理解の共有を図った。翌1月26日に行われた国際シンポジウムでは、ルカッセン教授、研究代表者および貴堂嘉之一橋大学教授を報告者とし、研究分担者がコメンテータ(杉浦未樹)と司会(田中ひかる)を務め、移動の論理を通じて「移民」概念の再検討を目指した。以上の研究会活動を通じて、各人の問題関心の共有が深まった。 また、研究会活動とは別に、本年も各人が研究対象地域における史資料調査や文献購入を通じて、それぞれの研究を進めた。その結果は徐々に論文等の形で成果となって現れつつある。さらに、プロジェクトのホームページの充実を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では二回の研究会とシンポジウムを開催することになっていたが、招聘したオランダ・ライデン大学レオ・ルカッセン教授の業績を参加者が確認するための研究会を追加したために、三回の研究会とシンポジウムを実施することになり、充実した研究会活動を展開することができた。とりわけ、近代ヨーロッパにおける移動の論理に関して多数の著作を持ち、またこの分野における欧米の研究者の知己も多く、彼らによる共同研究でしばしば編者として要の位置を占めるルカッセン教授との意見交換を行い、彼から各人がさまざまな示唆を得たことは、今後の共同研究の進展にとって非常に有意義であった。 一連の研究会活動と各人が行った研究対象地域での史資料調査や文献購入を通じて、本年度の目標であった移動の論理に関する具体的な事例の提示と、提示された事例に基づく移動の論理のパターン化と分類・整理が、順調に進行した。その成果は、論文などの形で徐々に具体的な成果となって現れつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度(三年目)には、平成24年度と同様に、二回ないし三回の研究会と一回のシンポジウムを開催する予定である。昨年度と同様に、欧米から当該分野における第一線の研究者を招聘し、本科研参加者との研究に関する意見交換会と国際シンポジウムを実施する。招聘する参加者は現時点では未定であるが、アメリカ合衆国ミネソタ大学ダナ・ガバッチア教授が有力な候補である。ガバッチア教授の招聘が決定すれば、これまで十分な研究が行われてきたとは言い難い「女性移動者の移動の論理」を中心に議論を行いたいと考えている。 平成26年度(最終年)には、2014年5月に開催予定の日本西洋史学会大会(於:立教大学)において、本研究と科研費基盤研究(B) 「近現代アメリカ社会運動史の再検討―大西洋世界と太平洋世界をつなぐ視点から」(2012年~2014年度、研究課題番号00272774、研究代表者:田中ひかる)とのジョイントによるシンポジウム企画(仮題「「移民」概念の再検討とグローバルヒストリー」)を行うことが既に決定している。このシンポジウムにより、これまでの研究成果の暫定的な総括を図るとともに、より広範な研究者が本研究の意義を認知する状況を作る。また、本研究の成果を共同論集として然るべき出版社から刊行するために、準備作業を行う。 本年度に招聘したルカッセン教授との意見交換会において、欧米の研究と比べても遜色のない研究を行っていながら日本語だけで成果を公表しているのはもったいないという指摘を教授から受け、研究成果を英語でも公表することが急務であることをあらためて痛感した。この課題をどのように実現していくかが、研究を遂行する上での現在の問題点である。
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Research Products
(20 results)