2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代ヨーロッパを中心とする空間的移動の実態と移動の論理に関する比較史研究
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23320164
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
北村 暁夫 日本女子大学, 文学部, 教授 (00186264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (00272774)
青木 恭子 富山大学, 人文学部, 准教授 (10313579)
木村 真 日本女子大学, 文学部, 研究員 (20302820)
一政 史織 (野村 史織) 中央大学, 法学部, 准教授 (20512320)
杉浦 未樹 法政大学, 経済学部, 教授 (30438783)
平野 奈津恵 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60634904)
山本 明代 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (70363950)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(アメリカ合衆国) / 国際情報交換(イタリアなど) / 近代ヨーロッパ / 空間的移動 / 移動の論理 / ジェンダー / ネットワーク / グローバル・ヒストリー |
Research Abstract |
本研究は、17世紀から20世紀前半までの近代ヨーロッパにおけるさまざまな形態の空間的な移動を対象とし、移動する人々を移動という行為を実践する行為主体として捉えた上で、移動をめぐる論理を明らかにすることを目的としている。 三年目にあたる平成25年度は、三回の研究会と一回の国際シンポジウムを実施した。第1回研究会(2013年7月6日・7日、富山県内で開催)では、「ハンガリー系ディアスポラの論理の解明に向けて」、「バルカン山脈周辺の野菜栽培農民の移動の論理」、「ファシズム期イタリアの国内移民」の三報告が行われ、熟練技術を有した農民が出稼ぎ的な移動を行う際の移動の論理や、ディアスポラ概念を用いることの有用性について討議がなされた。また、黒部市内の漁業資料館を見学し、北方領土への移住を生んだ黒部市生地地区の移動の論理について考察する機会を得た。第2回研究会(2013年12月7日・8日)では、招聘が決定していたアメリカ合衆国ミネソタ大学ダナ・ガバッチャ教授の諸論考を読み合わせ、氏の移民史研究の方法論や成果について確認した。また、2014年度の日本西洋史学会で本科研が主体となって行う予定のシンポジウムの準備会合を行った。ガバッチャ教授を招いて行った第3回研究会(2014年1月24日)では、参加者全員がそれぞれの研究の概要を簡潔に報告し、各人の研究の進展に向けた意見交換を行った。翌1月25日に行われた国際シンポジウムでは、ガバッチャ教授、二名の研究分担者(山本明代、杉浦未樹)が女性移民に関する報告を行い、女性移民の移動の論理をめぐる最新の研究動向と事例の提示がなされた。 以上の研究会活動とは別に、本年も各人が研究対象地域における史資料調査や文献購入を通じて、それぞれの研究を進めた。その成果は徐々に論文等の形で結実しつつあり、また共同研究として一冊の書物にまとめる計画が進行しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度と同様に、本年度も三回の研究会と一回の国際シンポジウムを開催し、当初予定していた研究会活動を順調に実施することができた。平成24年度のルカッセン教授招聘に続き、今年度はアメリカ合衆国における移民史研究の第一人者であるガバッチャ教授を招聘して、各人の研究成果の紹介と意見交換を行う研究会を実施したことや、女性移民をめぐる国際シンポジウムの開催により女性移民をめぐる最新の研究動向について参加者が共有できたことは、今後の研究の進展にとってきわめて有意義であった。 これまでに展開されてきた研究会活動や参加者各人が自らの研究対象地域で行った史資料調査を通じて、本年度の目標であった移動の論理をめぐる理論的枠組みについて一定の見通しを立てることができた。その成果については、論文などの形で具体的な成果となって表れつつある。また、最終年度である平成26年度に予定されている日本西洋史学会でのシンポジウム開催は、本研究のこれまでの成果を公開する集大成の場として位置付けているが、それに向けた準備を前進させることができたのもたいへん有意義であった。 これまでの研究成果を踏まえて、本科研終了後に成果を一冊の書物として刊行することを計画しているが、参加者による研究の進展状況に若干のばらつきが存在することもあり、平成25年度中に出版に向けた協議を進めることができず、出版計画の作成や出版社の選定も実現していない。その点が今後の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研費の最終年度である平成26年度には、二つの大きなプロジェクトが予定されている。一つは第64回日本西洋史学会でのシンポジウム「「移民」概念の再検討とグローバル・ヒストリー」開催である。本研究と科研費基盤研究(B)「近現代アメリカ社会運動史の再検討―大西洋世界と太平洋世界をつなぐ視点から」(2012年~2014年度、研究課題番号00272774、研究代表者:田中ひかる)とのジョイントであり、本研究の成果をこれまで以上に広い公衆に向けて発表する機会と位置付けている。シンポジウム開催後には、反省会を兼ねた研究会を開催し、これまでの研究の成果と問題点についてあらためて検証する予定である。 もう一つのプロジェクトは、研究成果を一冊の書物として出版することである。この点については、まだ出版計画の作成や出版社の選定がなされていないため、平成26年度中に推進する必要がある。所収される論文の執筆に向けては、参加者の置かれている個々の事情により準備状況に多少のばらつきがあるが、比較的早い時期の刊行に向けて、態勢を整えることも必要とされている。 平成24年度に招聘したルカッセン教授から、欧米の研究と比べても遜色のない研究を行っていながら日本語だけで成果を公表しているのはもったいないとの指摘を受け、研究成果を英語でも公表することが急務であるとあらためて認識したことを昨年の実績報告報告書に記したが、この点については現時点でほとんど前進をみていない。これも平成26年度における重要な課題であると認識している。
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Research Products
(20 results)