2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
朝治 啓三 関西大学, 文学部, 教授 (70151024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 節夫 青山学院大学, 文学部, 教授 (70036060)
加藤 玄 日本女子大学, 文学部, 准教授 (00431883)
服部 良久 京都大学, 文学研究科, 教授 (80122365)
田口 正樹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (20206931)
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Keywords | 神聖ローマ帝国 / カペー家フランス王国 / プランタジネット・ドミニオンズ / アンジュー帝国 / 領邦 / 都市共和政 / 帰属心 |
Research Abstract |
2011年6月に関西大学で研究会を開催し、研究分担者と協力者とが一堂に会して、研究の方向について討論し、大まかな研究視角を確認した。従来の2国間交渉史の視角では、境界紛争とか、取引や同盟の関係として処理されてきた王族問の結婚、それに基づく王位、公位の相続、領土の継承という、いわば支配者間の交渉だけで、歴史が説明されている現状に対して、本研究では在地の小権力体がなぜ特定の家系の王位継承や相続に同意し、そこへ帰属したのかをキーワードに、西欧世界全体の権力構造解明を研究課題にすることを確認した。 それと同時に、これまでの研究で蓄積した中世英仏関係史の研究成果を、『中世英仏関係史』(創元社)として刊行する準備を進め、2012年4月に刊行することが出来た。その制作過程で、核分担者と協力者は、帝国的権力構造についての各自の理解の仕方の違いを認識し、それらを討議によってよりよい結論へと導く努力することが出来た。 2012年12月に東京で開いた研究会では、新たに研究会に加わった神聖ローマ帝国史研究者の研究史整理によって、英独間の権力構造が、英仏間のそれとは異なる「原理」によって関係していることが指摘され、その過程で発見された新たなテーマについて、代表者が指揮をとって分担者に複数の論点に分けて研究してもらうことが確認された。 若手研究者の学問的養成を研究会活動を通して行うことも、本研究の重要な課題として掲げて置いたが、その趣旨に従って、研究協力者4名をフランスのパリ古文書館などへ派遣して、古文書を手にとって、解読、転写する作業を体験させた。研究費はこの目的のためにも使用された。彼らには同時に現地のフランス人研究者からの直接の助言を求めさせ、それを今後に生かせるように指導した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、従来の一国完結史観を脱して、西欧を帝国的権力構造が地域小権力体の帰属心を確保することで、全体としての秩序を再構成しようとしていたと捉えることを提唱し、実証することを目指している。すでに英仏関係史の研究によって、この構想『中世英仏関係史』(創元社)2012年を刊行するによって達成した。その上に立って、神聖ローマ帝国をも視野に入れた、3つの権力核による帝国的権力構造の建設と維持と言う動態的な、西欧権力構造論を実証する予定である。今回新たに神聖ローマ史研究の専門家に加入してもらい、その研究発表を行うことで、視野をさらに広げることに成功した
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Strategy for Future Research Activity |
この新視点は我が国では全く新しいものであるが、欧米の学会では先行研究者が存在している。それらの人々は相互に連絡し合っているのでは無く、孤立して研究を発表している。そのうちの一人、ウェールズ大学のビヨルン・ヴァイラー博士を、2012年度中に日本に招聘して、研究会を開催し意見交換をする予定である。その後も、フランスやドイツからの研究者の招へいを考慮している。それらの意見交換を踏まえて、我々の年来の権力構造論を3つの権力核を要とする帝国的権力構造からなる西洋中世世界として、説明する歴史像を、著作によって世に問うことが出来る予定である。
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Research Products
(22 results)