2011 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム法の近代的変容に関する基礎研究:オスマン民法典の総合的研究
Project/Area Number |
23330006
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
大河原 知樹 財団法人 東洋文庫, 研究部, 研究員 (60374980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 知義 中央大学, 法務研究科, 教授 (00151522)
堀井 聡江 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 講師 (20376833)
磯貝 健一 財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (40351259)
奥田 敦 慶應義塾大学, 総合政策学部, 教授 (50224150)
宮下 修一 静岡大学, 法務研究科, 准教授 (80377712)
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Keywords | イスラーム法 / 民法 / 比較法 / 近代法 / オスマン帝国 / オスマン民法典(メジェッレ) / 歴史 / 中東 |
Research Abstract |
平成23年度は、研究体制の確立の段階であり、年度内に9回の定期研究会を開催した。 これらの定期研究会において、オスマン民法典であるメジェッレ(以下、M法典)の中では「序章」とは異なった意味で最も重要な意味合いをもつ「第1章売買〔契約〕の書」(101~403条:全303条)の訳文を検討し、ほぼそれを終えた。しかしながら、若干の条文の検討が完了しなかったために、公刊するまでには至らなかった。「売買の書」の訳出作業にあたって、日本民法専門家から、イスラーム法の特性として、(1)売買契約の分類、(2)売買契約における売買目的物の引渡しと受領の規定の多様性、(3)選択権の種類の多様性などが指摘された。また、イスラーム法専門家は、M法典の中に、時代の要請に合わせた法解釈を発見し、具体的な条文として、製造物供給契約(イスティスナー)規定(2篇7章4節389条)をあげた。ハナフィー派の通説では一般的に「無効な契約」とされてきた契約(たとえば服の製造)を、これまでは少数派意見であったクヒスターニーの学説を採用して有効化したことが確認された。このようなイスラーム法の近代的な変容のプロセスについて、今後の研究会でも積極的に明らかにしていきたい。 また、トルコとキプロスにおいて海外調査を実施し、これまで日本に招来されていなかった文献をかなりの程度購入した。アラビア語版のM法典の校訂作業については完了した。年度末には、それまでに確定した専門用語についてデータ入力、整理を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開始前にある程度想定されていたことではあったが、101条以降の条文が、それまでと比べて長文化したほか、西洋や日本の民法に馴染みにくい法概念が頻出したために、訳出作業が順調に進まなかった点があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、M法典をさまざまな観点から検討して、訳出する研究会を開催するという地道な手法をとらざるをえないために、今後の研究の推進について、大きな変更はない。
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Research Products
(18 results)