2012 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム法の近代的変容に関する基礎研究:オスマン民法典の総合的研究
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23330006
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
大河原 知樹 (財)東洋文庫, 研究部, 研究員 (60374980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 知義 中央大学, 法務研究科, 教授 (00151522)
堀井 聡江 桜美林大学, 人文学系リベラルアーツ学群, 講師 (20376833)
磯貝 健一 (財)東洋文庫, 研究部, 研究員 (40351259)
奥田 敦 慶應義塾大学, 総合政策学部, 教授 (50224150)
宮下 修一 静岡大学, 法務研究科, 教授 (80377712)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イスラーム法 / 民法 / 比較法 / 近代 / オスマン帝国 |
Research Abstract |
オスマン民法典(メジェッレ)の講読と、翻訳作成を目標に、計9回の研究会を行った。アラビア語テキスト第396条から537条までの検討を行った。第1回を除く、すべての研究会で「第2篇 賃約の書」を検討し、まず、賃約とは「一定の対価と引き換えに一定の用益を売却すること」という大原則を確認した。実際の契約において、賃約と売買がどのように異同があるのかを確認することが要点となった。たとえば、「売買の書」が定める各種の選択権は、賃約にも準用されることが各所で明記されるが、これは両契約の同質性の最たるものであろう。 今年度は、さらに多彩な分野からの参加者も増え、各種翻訳の対照作業が可能になったため、より詳細に条文を検討することが可能となったが、反面、一回あたりの検討条文が減った。基本用語として用いられる語(たとえば、「拘束」「適正」「不適正」など)は、日本民法との違いを改めて確認しつつ訳語の検討を進めた。 アラビア語、オスマン・トルコ語、英語、フランス語を駆使して判明した内容の相違は重大なものから些細なものまで多岐にわたるが、あくまで翻訳の底本がアラビア語版であるため、そのニュアンスを活かしつつ、正文や各種訳の意図を可能な限り盛り込む難しさが浮き彫りとなった。ただし、このような相違はアラビア語版のオスマン民法典がオスマン帝国崩壊後のアラブ諸国やイスラエルにどのように継受されていったかを研究する上で必要欠くべからざる作業であると考えられる。 なお、第6回研究会において、近藤信彰氏(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授)による報告「19世紀アフガニスタンにおける法廷制度をめぐって―『カーディー達の基礎』の位置―」を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の教訓を踏まえ、今年度の目標を修正したこと、研究会を定期的に開催できた(9回)ため、順調に翻訳作業を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度検討できなかった「第2篇 賃約の書」84条分の完成を目指すことが重要である。これを達成することで、オスマン民法典中の契約法の核にあたる「売買」「賃約」の翻訳が達成される。これを踏まえてさらに次の研究の発展につなげる方法を模索することが大事である。
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Research Products
(18 results)