2011 Fiscal Year Annual Research Report
特定行政領域における公私協働に焦点を当てた国家と市民社会の役割分担と規範論の検討
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23330010
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
人見 剛 立教大学, 法務研究科, 教授 (30189790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紙野 健二 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (10126849)
磯村 篤範 島根大学, 法務研究科, 教授 (70192490)
角松 生史 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90242049)
高橋 明男 大阪大学, 法学研究科, 教授 (60206787)
野呂 充 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (50263661)
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Keywords | 公私協働 / PPP / 協働原則 / 保証国家 |
Research Abstract |
本研究は、1.国内における公私協働の仕組みと実態を具体的に調査し、問題発生の構造等を分析し、法的処理の方法を解明すること、2かかる現実に立脚して、国家と市民社会の役割分担を前提とする規範論を検討し、比較法的研究成果の継続発展を通じて、公私協働法理の到達段階や今後の方向性とそこに伴う課題を明らかにすることを目的とする。 1.との関係では、8月26日~27日の研究会において、PFIが導入された公営住宅、民営化された公共宿泊施設、社会保障事業に導入された指定管理者について、主に関西地区の問題事例の報告を受けて検討した。特に、法的紛争に至っている福祉事業団の事例は、指定管理者制度と地方公共団体との関係が再検討を迫られていることを再認識する契機となった。また、3月28日の研究会では、吹田市の自治基本条例を事例として、そこでの「市民自治」の運営原則に関わる「協働」の定義、市民参加・参画と協働の関係をめぐる議論の紹介と検討が行われた。 2.との関係では、まず法治主義に焦点を当てて、公私協働システム導入との関係での検討課題を見い出そうとしてきた。7月31日にはソウル外国語大学の金海龍教授から、法治主義と公私協働をめぐる韓国における議論の紹介を受け、11月26日の研究会では、高田敏博士に法治主義論の今日的課題について報告を受けた。公私協働システムの導入の中でも公的サービスの提供を私人に委ねる形態にあっては、民主的正当性の付与と市場原理によるサービスの高度化との問に緊張関係があり、特に、私法形式の行政活動に見出されるべき行政法法理の探求と、その一つの試みとみられるドイツの「私行政法」論などを検討した。さらに、近年、地方自治制度ばかりではなく公私役割分担との関係でも論及されることが多くなった補完性原理について、3月にドイツにて調査研究を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)本研究の課題は、様々な行政領域に即した公私協働原則の導入の検討を行うことを一つの課題としているが、環境法や都市法など、なお調査分析検討の不十分な対象領域がある。 2)公私役割分担に関わる公法法理(私行政法論や補完性原理など)の検討作業も現在進行途上である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)研究目的・研究計画に変更を要するものではないが、研究分担者の間での役割分担を改めて明確にし、研究協力者を含め共同研究を着実に進めることが求められている。 2)実態調査に関しては、特に社会福祉事業の民営化・PFI導入などに伴う今後の動向も含めた継続的調査を進めると共に、環境行政や都市開発行政の分野などにおける公私協働の検討をすすめる。 3)私入に行政活動を委ねた場合に、行政を規律していた公法法理をどこまで当該私人に及ぼすべきか、私人と行政との間の公法契約法理を含めて、比較法研究や実態調査から理論的な検討を深化させていく。 4)公私役割分担そのものを規律する法理や責任分担に係る法学的表現とも言うべき損害賠償責任の検討についても具体的な成果を目指していく。
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Research Products
(13 results)