2012 Fiscal Year Annual Research Report
刑事司法制度における再犯防止概念の再検討と福祉的ダイバージョンの研究
Project/Area Number |
23330022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 政和 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30188841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甘利 航司 國學院大學, 法学部, 准教授 (00456295)
金澤 真理 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10302283)
武内 謙治 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10325540)
渕野 貴生 立命館大学, 法務研究科, 教授 (20271851)
崔 鍾植 大阪商業大学, 総合経営学部, 准教授 (20380652)
平山 真理 白鴎大学, 法学部, 准教授 (20406234)
斎藤 司 龍谷大学, 法学部, 准教授 (20432784)
高平 奇恵 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (30543160)
森久 智江 立命館大学, 法学部, 准教授 (40507969)
前田 忠弘 甲南大学, 法学部, 教授 (60157138)
丸山 泰弘 立正大学, 法学部, 講師 (60586189)
佐々木 光明 神戸学院大学, 法学部, 教授 (70300225)
正木 祐史 静岡大学, 法務研究科, 教授 (70339597)
井上 宜裕 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70365005)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 刑事司法 / 再犯防止 / ダイバージョン / 福祉 |
Research Abstract |
今年度は、ダイバージョン制度と福祉政策との連携という観点で、非拘禁的措置を拡大する制度や試みについて調査・検討した。刑事司法と福祉、刑事司法と監視(社会防衛、保安処分化)、福祉と監視などの相互関係を意識し、「刑事司法の福祉化」と「福祉の刑事司法化」を区別しつつ、あるべき方向を模索することを目的とした。その際、対象者の監視ではなく、生活支援(物的、精神的サポート)を基軸においた。具体的には、以下の研究及び調査を実施した。①刑の一部執行猶予制度について意見書を取りまとめ、パブリックコメントを提出した。また、第39回日本犯罪社会学会のテーマセッションにおいて、「刑の一部猶予制度」をオーガナイズし研究成果の報告をおこなった。②アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアのダイバージョン制度及びフランスの刑罰修正手続について検討した。また、外国調査として、フランス調査及びスウェーデンの刑事司法及び関連機関等の調査を実施した。スウェーデンの調査結果については、次年度の早い時期に大学紀要に公表する予定である。③国内の実態調査として、滋賀県地域生活定着支援センター、同栃木県定着センター、京都弁護士会、京都シェルター、のぞみの園、ヒューマンハーバー、福岡県就労支援事業者機構、福岡刑務所等の視察および聞き取り調査を実施した。④アンケート調査として、定着支援センター、単位弁護士会、法テラス合計168か所に対して、ダイバージョンと福祉的措置の関係についてプレアンケート調査を実施した。その分析と本調査は次年度の課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①ダイバージョンの制度研究については、比較法的研究として、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、スウェーデンについて行うことができた。制度については概要を把握することができたので、その運用実態についてできる限り最新の情報を収集し、論文としてまとめる作業に取りかかっている。 ②刑事司法と福祉の連携に関する国内実態調査については、上記の通り、視察および聞き取り調査を実施した。これを記録としてまとめるとともに、収集した情報の整理・分析を進めている。 また、全国の地域生活定着支援センター、各単位弁護士会、法テラス合計168か所に対してプレアンケート調査を実施した。回収率は43%であった。既にその集約整理と分析を始めている。さらに詳細な情報を得るために、ヒアリング調査を行う機関の選定を行った。 ③外国の実態調査については、スウェーデンとフランスについて関連機関の視察および聞き取り調査を実施した。そのまとめを行い、公表の準備をしている。 ④理論的研究としては、再犯防止概念とその施策について、歴史的分析と現状分析に取りくんでいる。この点については、予定よりやや作業が遅れているが、次年度に取り組みを強化する予定である。 以上により、本研究の目的に照らして、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)実態調査と情報収集・整理 1)国内調査に関しては、被疑者、被告人に対する福祉的措置によって起訴猶予、執行猶予などのダイバージョンを得る試みをしたことがあるかどうかについて行ったプレ・アンケート調査を集約・整理する。その経験を有する各単位弁護士会、法テラス、地域生活定着支援センターの中から特に調査すべき機関を選定し、聞き取り調査を実施する。 2)外国調査は、引き続き、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリア、韓国等について行う。日本で行う調査の観点を保持しつつ、ダイバージョン制度と社会福祉の相互連携の現状について、社会的背景や福祉制度あるいは国民意識の違いにも留意しつつ調査を行う。 (2)これまでの研究成果に基づき理論的検討を行う。以上の調査と平行して、これまでの研究成果をも踏まえて、以下の論点について理論的・実証的検討を行う。 ①総論:問題の所在と検討課題の確定。②日本におけるダイバージョンの現状と課題。 ③諸外国におけるダイバージョン制度の概要。④ダイバージョンと社会的(福祉的)援助・再犯防止。諸外国におけるダイバージョン制度において、あるいは日本におけるダイバージョンの諸段階ごとに、どのような社会的(福祉的)援助がどのように行われているか、「再犯防止」概念がどのような(あるいは、そもそも)機能を果たしているか、現状を整理・検討する。そのうえで、理論的課題として、社会的(福祉的)援助の枠組み・位置づけ及び「再犯防止」のあり方について検討を加える。⑤ダイバージョンの新しいモデル。上記検討を基礎として、具体的モデル案を作成するための諸要素を整理・検討し、グランドデザイン構築に向けた検討を行う。
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