2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23330077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
末廣 昭 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60196681)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 雇用保障 / 社会リスク / 生活保障 / 所得格差 |
Research Abstract |
本研究は、東アジアの人口動態、労働市場の変容、社会保障制度の整備状況を踏まえたうえで、同地域の雇用保障の実態を把握する同時に、所得・医療・雇用・介護の4つからなる「生活保障」全体の今後を展望することを目的とする。 平成24年度は、中国、台湾、韓国、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、日本の10カ国について、各国・地域の人口センサス、労働力調査、家計調査、高齢者調査などの結果をもとに、①人口動態(男女別労働力率、失業率、高齢者比率などの推移、人口ボーナス論)、②労働市場の特徴(男女別、年齢別、業種別、地位別、学歴別の就業人口と失業人口、失業の理由、正規・非正規労働者の分布など)、③社会保障制度の現状(年金制度、基礎生活保障、健康保険、失業保険、高齢者対策など)、④国内の格差問題(貧困人口、所得と消費支出の階層別格差)、⑤社会指標(自然災害、犯罪、自殺など)の5つの分野について、国際比較のための基礎的資料・データを作成した。このうち日本を除く9カ国について合計619表(計1000頁を超える)のデータを、平成24年10月末に東京大学社会科学研究所のホームページにアップロードし、公開した。 また、中国、韓国、タイ、マレーシア、インドネシアで実地調査を行い、必要な統計データ及び一次資料の収集や、現在進行中の社会保障法や社会保障制度の改革(中国、タイ、インドネシアなど)に関する聞き取り調査を実施した。また、東アジアの雇用保障と企業福祉の比較については、平成25年5月米ハーバード大学イエンチン研究所の国際シンポジウムや、同年6月福祉社会学会におけるパネルで、それぞれ報告を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度、2年度に予定していた東アジア10カ国・地域の雇用保障に関わる資料・データ集の作成はほぼ完成し、残っている日本についても、平成25年6月までに図表とデータをアップロードできる見通しである。なお、当初計画していた正規・非正規労働者の企業福利や社会保障制度(健康保険、失業保険など)の適用度合いに関する企業レベルでのアンケート調査は、現地企業の協力を得ることがきわめて困難であることが判明したため、これに代替する企業・労働統計の収集や企業からの聞き取り調査の実施に置き換えることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成25年度は、共同研究のメンバーが現地で収集したデータや聞き取り調査の結果を使って、すでにアップロードしている資料・データ集の更新を図る。とくに手薄であったベトナム関係の最新のデータ(ベトナム語)が入手できたため、平成25年度から研究協力者となる藤倉哲郎氏の協力を得て、データのさらなる充実を図る。同様に、インドネシアについても、現地語のデータ収集や、社会保障法案の審議・同法の成立をめぐる現地語新聞記事の整理が進んでいるので、データの補充を図る。 一方、各国・地域の比較については、①人口動態、②労働市場(とくに地位別就業人口構造、失業率、正規・非正規労働者)、③国内格差の拡大、の3つを柱とする報告会を実施し、東アジア地域に共通する特徴と国別の固有の特徴を明らかにする。また、その報告会での議論の内容や各メンバーの個別の研究結果をもとに、東京大学社会科学研究所のリサーチシリーズ等に、共同研究の成果を発表する。同時に、国内外の国際ワークショップや学会(ハーバード大学イエンチン研究所、福祉社会学会、社会政策学会、アジア政経学会、現代韓国朝鮮学会、日本タイ学会など)などで、成果を報告していく予定である。
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Research Products
(23 results)