2012 Fiscal Year Annual Research Report
リード・ユーザー・メソッドを用いたオープン・イノベーションの理論的実証研究
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23330136
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
水野 学 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (80411685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
文能 照之 近畿大学, 経営学部, 教授 (30388491)
秋山 秀一 兵庫県立大学, その他の研究科, 准教授 (30388889)
廣田 章光 近畿大学, 経営学部, 教授 (60319796)
井上 隆一郎 東京都市大学, その他部局等, 教授 (70438076)
竹村 正明 明治大学, 商学部, 准教授 (30252381)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イノベーション・マネジメント / ユーザー・イノベーション / オープン・イノベーション / 製品開発 |
Research Abstract |
平成24年度は大規模なサーベイ調査を実施した。本調査の目的は,これまで個別事例の収集にとどまることが多かったユーザー・イノベーション/オープン・イノベーション(UOI)研究に対して,その発生実態に関して産業横断的に全体を俯瞰することであった。調査対象は,先行研究によってUOIが頻繁に発生していることが明らかな製造業やソフトウエア業はもちろんのこと,農業や林業といった第一次産業,飲食や小売,交通といった第三次産業まで網羅したため,14業種2,339社にものぼった。実施方法は調査内容の新奇性(一般的にまだ知られていないイノベーション形態であること)や,キーマンへの確実なアクセスを実現させるために電話調査をおこなった。なお電話調査には高い専門性が要求されるため,専門企業へ業務委託をおこなった。 回答企業数847社(回収率36.2%)からの重要な発見物は,①全業種においてUOIが発生していた ②全体では回答企業の約40% ③予想された製造業以外にも,鉱業や農業でのUOI発生率が高かった ④その内容も,用途変更といった簡単なものよりも,既存製品の改良や新規開発といったハードルの高いものが予想以上に多かった ⑤UOIの多くが,メーカーの製品開発には生かされていない可能性が高い,というものであった。これの発見は,先行研究では経験的に語られることはあったものの,数値データとして示されていないものばかりであり,その意義は大きい。 さらにもう1つの重要な成果は,このようなイノベーション関連調査を行う方法論について多くの示唆を得ることができたことである。スクリプトの作成方法はもちろんのこと,サンプリングやキーマンへのアクセスなど,追試をより円滑に行うためのツールキットの作成が可能になると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,①理論研究②2次データ分析③サーベイ④インタビューの順に研究を進めていく予定にしていたが,③サーベイまでは計画通りである。また③サーベイ(電話調査)の際にインタビューへの協力依頼も行ったが,40 社を超える企業から応諾を得ている。よって④インタビューも順調に行えると考えている。 サーベイの実施が予定よりやや遅れたこともあって、データの詳細分析が年度内に終了できなかったことは残念であったが,ただそれはあくまでも想定の範囲内であり大きな問題とは考えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,まずサーベイ調査の詳細な分析を行う予定である。サーベイを電話調査で行ったことによる弊害として,テキストデータからの変換作業にやや時間を取られるが,所属研究機関の支援スタッフからの協力を得られる予定である。 つぎにインタビュー調査であるが,こちらに関しては先述のようにすでに応諾を得ている企業が40社以上ある。ただ対象企業は地理的な広がりが大きいため,効率的な日程調整と予算執行が必要となる。場合によっては一部を外部委託することも検討する必要がある。 さらに最終年度に向けて,研究成果公表も今まで以上に生産性を上げる予定である。具体的には定性調査と定量調査結果の論文化を進めると共に,国際学会での発表も増やすつもりである。 以上のタスクを効率的に実現させるために、研究組織の見直しを図った。まず定量調査や文献調査を専門とした3名の分担研究者にかわり,国際学会での発表実績に優れたメンバーを1名加えた。人数は減少したが,インタビューに強みを持つ2名,国際学会発表に強みを持つ2名のバランスの取れた組織編成になるとともに,予算をより効率的に使える体制となったと考えている。
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