2013 Fiscal Year Annual Research Report
リード・ユーザー・メソッドを用いたオープン・イノベーションの理論的実証研究
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23330136
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
水野 学 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (80411685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹村 正明 明治大学, 商学部, 教授 (30252381)
廣田 章光 近畿大学, 経営学部, 教授 (60319796)
滝本 優枝 (金井 優枝) 大阪経済法科大学, 経済学部, 准教授 (30330351)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イノベーション / ユーザーイノベーション / オープンイノベーション / 製品開発 |
Research Abstract |
平成25年度は、前年度に実施したサーベイ調査のフォローアップを目的としたインタビュー調査と、これまでの成果報告を行った。これまで個別の事例研究の収集にとどまることが多かったオープン/ユーザーイノベーション(OUI)研究に対して、我々のサーベイ調査は、OUIと親和性の高い産業を明らかにすることに成功した。ただ①定期的なパネル調査に向けたサーベイ精度の向上および②実務界への応用可能性を高めるという2つの目的を果たすためには、サーベイ協力企業に対する質的調査が不可欠であった。そこで本年度は、OUIが数多く行われていた「農業」「鉱業」「製造業」の3つの業界を中心に、具体的にどのようなイノベーション、どのようなモチベーションから行われていたのかについてインタビュー調査を行った。 調査の結果から、ユーザー企業が自らイノベーションに取り組む動機として、ユーザーが利用する製品の「寡占度」「グローバル化進展度」や、ユーザー企業が所属する産業の「産業ライフサイクル」「パワー関係」「規制度合い」「市場規模」といった仮説が導き出された。量的な検証を必要とするが、いずれもこれまでの研究では指摘されてこなかった新しい仮説である。さらには「アフターパーツ」市場を形成することによって、これまでとは異なるイノベーション活性化政策の可能性も見いだすことができた。 次にこれらの成果を、論文のみならず国際学会でも発表し、多くの研究者からの興味関心を集めることができた。とりわけヨーロッパ最大級の国際ビジネス学会European International Business Academyで発表の機会を得たこと(査読通過したこと)は、本研究が順調に進展していること示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、インタビュー調査の一部を終了させ、仮説をいくつか導出し、権威ある国際学会での発表の準備を目指していたが、インタビュー対象企業から積極的な協力を得ることができたこともあり、必要となるインタビュー(1巡目)はほぼ終了するとともに、予想以上の興味深い仮説を得ることができた。 さらにこの研究を進展させるために取り組むべき方向性や、問題点も明らかになっており当初計画を大きく上回る研究成果を挙げることができていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究活動は、大きく3つの柱で構成される予定である。 まずはサーベイとインタビューで得られた仮説を、さらに理論化させていることである。これまで事例収集にとどまりがちであった本研究分野であったが、過去3年間の研究で得られた量的・質的データを集約して理論化を目指していく。これは分担研究者との頻繁な研究会議によって実施される。 次に研究成果の発表、とりわけ実務界とのインタラクションである。学術面での研究が進みつつあるOUI研究であるが、実務界への広がりはいくつかの理由から遅れている。イノベーション研究は学術と実務の両輪があってこそ進展する。そこで日本マーケティング学会の協力を得ながら、産学協同研究会を立ち上げるとともに、セミナーを行う予定である。 最後に、この研究を発展させるための準備である。先に述べたように、本研究はサーベイとインタビューという量と質の両面から、予想以上の成果を挙げている。しかし一方で、本研究単発の取り組みだけでは明らかにできないこともわかってきた。とくに時系列データの必要性を強く感じている。4年間にわたる研究の最終年度として、OUIの動的な把握を実現させるために、本研究をどのように昇華させていくべきなのか。その方法論についても議論を深めていく予定である。
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