2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本社会の形成過程に関する計量歴史社会学的研究
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23330166
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
橋本 健二 武蔵大学, 社会学部, 教授 (40192695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 香 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (10313355)
片瀬 一男 東北学院大学, 教養学部, 教授 (30161061)
稲田 雅也 拓殖大学, 国際学部, 准教授 (40251631)
元治 恵子 明星大学, 人文学部, 准教授 (60328987)
岩井 八郎 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (80184852)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 社会階層 / 社会移動 / 雇用慣行 / 貧困層 / 戦争体験 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き「京浜工業地帯調査(従業員個人調査)」の調査票原票をデータ化する作業を行い、記入された回答すべてをワークシートに入力した上で、地点コード、学歴コード、職業コード、従業先コードなどを付加したデータを作成した。さらに基礎的な集計と、調査対象企業の社史などの文献の収集と分析にもとづいてデータの校閲・クリーニングを行い、分析可能な段階にまでデータを完成させた。確定した有効回答数は14594名である。また「静岡調査」についても引き続き作業を行い、データを完成させた。確定した有効回答数は1000名である。 これらのデータと1955年から1975年までのSSM調査データについて分析を進め、研究会での検討を経て、次の諸点を明らかにした。(1)1951年時点の労働者の勤続パターンは、新規学卒・長期雇用の比率は小さいものの、これに学卒後5-10年を経て入社したあと同一企業に継続就業する準長期勤続型を加えれば60%を超えており、戦前期に形成された長期雇用慣行が限定付きながらも戦後へ連続していることを確認できる。(2)ただしこうした勤続パターンには企業による差が大きく、また学歴・出身階級によっても傾向が異なるなど、複合的な構造がある。(3)徴兵・戦災などの戦争体験は労働者のキャリアと現在の地位・収入に大きく影響しており、とくに中・高学歴の職員層ではキャリア中断により労務者へと転換した者が多い。(4)同時期の貧困層の多くは、戦争で男性稼得者または家業を支える資産を失った世帯であり、戦争によって貧困化していた。(5)反面、職業軍人を志して戦後まで生き残った男性には地位達成して上昇移動を果たしたケースが多いなど、戦争が社会移動に及ぼした影響にも複合的な部分がある。 以上の成果は、2013年3月14日の成果報告会で公表し、これをもとに中間的な報告書を6月中に完成させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では23年度と24年度でデータを完成させ、データ分析は主に25年度の作業としていたが、データの作成が予想以上に進展したことと、データの作成と並行して予備的分析を進めたことから、24年度においてもすでに多くの知見を得ることができた。これらについては24年11月に日本労働社会学会ですでに報告し、25年5月には社会政策学会大会で報告、6月に中間的な報告書にまとめて公表する予定である。また研究協力者もすでに学会発表、論文執筆などを行っている。これに伴って出版計画も、25年度中には進展する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
計画以上にデータ分析が進展していることから、当初の予定に加えて「京浜工業地帯調査(職場調査)」の資料と、1951年当時に関連して収集されたと考えられる各種資料の分析も行う。これにより、労働者の採用・移動・昇進などのプロセスがさらに詳細に解明されることが期待される。また、すでに分析結果に基づく情報発信が可能になっていることから、労働史・労資関係史などの専門家とも情報交換を行い、次の段階の研究計画についても検討を始める。このための費用は、科学研究費補助金以外の競争的資金をあてる予定である。
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Research Products
(11 results)