2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期における福田会育児院の運営組織と処遇に関する研究
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23330181
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
宇都 榮子 専修大学, 人間科学部, 教授 (40060701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 隆生 専修大学, 経済学部, 准教授 (40404826)
野口 武悟 専修大学, 文学部, 准教授 (80439520)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会福祉史 / 育児施設 / 貧困 / 里親 / ポーランド孤児 / 仏教 |
Research Abstract |
日本における社会福祉形成の過程で重要な位置をしめる福田会育児院(明治9年企画、12年創設)の事業の実際を明らかにすることをめざし、一作々年作成した「福田会育児院年表第一次稿」を昨年に引き続き補完した「福田会育児院年表第一次稿補訂版2」の作成を行い「福田会育児院研究の基礎的資料の整理 その3」としてまとめた(研究発表 雑誌論文参照)。補訂版2年表作成にあたっては、1903(明治36)年創刊の福田会育児院機関誌『福田会月報』(以下月報)の院報欄を中心に資料として用いた。この作業によって、福田会における児童の処遇状況(教育、養育状況等院内処遇、里親など院外委託の状況等)、仏教者とのかかわり、社会とのかかわり(恵愛部や一般の寄付者とのかかわり)などがさらに明確になった。 また、『月報』には、入所児童に関する記事が多数掲載されており、『児童原簿』(福田会所蔵)にこれらの情報を加えることができた。そして明治期『児童原簿』に欠落していた入所児童についても一部明らかとなったので『児童原簿』情報として加えた。さらに、昨年に引き続き『児童原簿』の翻刻作業をすすめたが、『月報』記載情報とあわせて児童に関する記録の検討をすすめる準備を整えることができた。こうした作業により、今後、貧困等により福田会に入所した児童について、入所理由、家族背景、入所後の生活、退所後の状況等が明確となり、その社会的性格を明確にしていく見通しをつけることができた。 さらに、明治期創設の仏教系育児施設愛知育児院の訪問調査を実施、福田会事業との比較検討を行った。 そして、福田会育児院史作成の前段階として略史の記述にとりくみ、福田会事業にかかわった1.仏教関係者について 2.福田会における教育 3.恵愛部活動について 4.寄付金についてなどの小論をまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、福田会育児院史をまとめて日本社会福祉史研究の中に位置づけ、日本における育児施設形成の社会的意義について明らかにすることにある。こうした目的に向かって、ほぼ研究会を毎月開催し、夏季は、集中的に史資料整理の作業を行い、まずは「福田会育児院略史」作成にむけて、一部原稿の執筆も開始できた。また、福田会育児院は、院内での子どもの養育に加えて、院外委託として里親制度を取り入れているが、これらの実際について、里親と福田会を結ぶ役割を果たした横山医院の活動について、『横山医院と福田会』としてまとめる準備を進めることができた。したがって、ほぼ順調に研究を進めてきていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、福田会育児院史作成の予備的作業として『福田会育児院135年小史』、『横山医院と福田会育児院』(院外委託である里親事業の実際)の刊行をおこない、福田会事業を日本社会福祉史の中に位置づける作業をおこなっていきたい。 そのために、児童に関する記録の検討を行い、今日の児童養護問題にも通底する「子どもの貧困」問題の社会的性格を明らかにしていきたい。さらに、福田会育児院で実践された院内教育、処遇(里親制度や院内養育)を通して、今日に通じる処遇のあり方を探っていきたい。 また、こうした育児施設と社会との関わりを、福田会に対する寄付行為からも探っていきたい。さらに、1795年の第3次ポーランド分割によって政治犯となりシベリアに流刑されたポーランド難民の孤児たちを1920年、赤十字社を通して福田会は引き受けているが、これらについても調査研究を進めていきたい。
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