2012 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期気質に関する20年間の時代変化と規定要因についての学際的研究
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23330208
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Research Institution | 國學院大學北海道短期大学部 |
Principal Investigator |
草薙 恵美子 國學院大學北海道短期大学部, 幼児・児童教育学科, 教授 (90341718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 信子 札幌大谷大学短期大学部, 保育科, 教授 (20320575)
高村 仁知 奈良女子大学, 研究院生活環境科学系, 准教授 (70202158)
陳 省仁 光塩学園女子短期大学, 保育科, 教授 (20171960)
大石 正 奈良佐保短期大学, 地域共生センター, 名誉教授 (30112098)
安達 真由美 北海道大学, 文学研究科, 教授 (30301823)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 気質 / 就学前教育 / 家庭生活 / 育児信念 / 発達期待 / 食事 |
Research Abstract |
本研究目的は、子どもの気質の20年間のコホート変化、幼稚園児と保育所幼児との気質発達における違いの有無、気質発達への心理社会的要因及び環境化学物質の影響の有無、を明らかにすることである。昨年度実施した予備調査(紙面調査、ネット調査、毛髪採取)結果に基づいて調査質問項目の精選及び毛髪採取方法等の改変等を行った後、全国5か所の幼稚園、保育所(合計21園)の在園児の家庭に対して紙面調査を実施した(調査I)。さらに調査I協力者の中からより詳細な調査への承諾が得られた家庭に対して、紙面調査、ネット調査、子どもの毛髪採取を実施した(調査II)。これらデータに基づき、子どもの気質、家庭環境、養育者の心理特性等について分析を行った。 気質発達については、調査Iデータから、幼稚園と保育所の子どもの気質に違いがあることが判明し、「外向性・高潮性」は保育所の子どもの方が、また「エフォートフル・コントロール」に関しては3歳児で保育所の子どもの方が高い傾向があった。またリアルタイムのネット調査の結果からは、兄弟姉妹の存在、入浴や食事等の生活を一緒にしている家族成員、日本的育児様式等が気質発達に関連することが見出された。子どもの家庭環境に関しては、子どもを幼稚園・保育所のいずれに通わせているかということよりも、年収による違いが見られ、基本的に年収が高い方が望ましい環境を整えているようであった(年収の高い方が、体罰が少なく、勉強に対する期待が大きく、子どもを多くのおけいこに通わせ、野菜をよく食べさせる等)。母親の育児信念は日常の家庭生活の様相(子どもが誰と一緒に食事をするか、子どもへの読み聞かせや合唱などの教育行動)に関連しており、また、母親としての不安の有無には、子どもへの制限や罰の使用回避、自身の怒りの制御、家庭の年収, 子どもの否定的情動性などが関係していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の予備調査では紙面調査票回収率が50%を下回った。よって、保護者の負担を軽減して回収率を向上させるため、調査項目を洗練した。その後、国内5か所(山口県、奈良県、山梨県、札幌市、滝川市)の幼稚園及び保育所(合計21園)を通じて、合計1475部のアンケートを配布した。予測通り、回収率は予備調査を上回った(園毎の回収率の平均は67.8%、回収総数942名)。また、保育所の子ども数が幼稚園児数に比べて少ない為、予定にはなかった滝川市内保育所2か所から追加の保育所データを収集した。調査IIのネット予備調査では、協力申請者の中に、メール受信不能により参加できない者が複数名いたため、自動返信機能を用いてメール受信可能な母親のみ参加できるように応募要領を変更し、携帯電話で確実にメール受信可能な母親みを調査IIの対象者とした。調査IIでは、当初の協力者目標数150名には達しなかったが、最終的に紙面調査、ネット調査、毛髪提供の全てに協力した人数は118名となった。また、当初の計画には含まれなかったが、子どもの気質への遺伝的影響検討のため、父親に対しての紙面調査を実施し、ほとんどの家庭の父親からの協力を得ることができた。また、予備調査分析で、半数以上の子どもの毛髪採取量が不十分であったため、毛髪採取方法を変更した。結果、ほぼ全員から十分な毛髪量を得ることができた。これら毛髪については、ICP-MSを使用して、前年度確立した分析方法により、合計18種類の重・軽金属についての分析を終えた。ネット調査は10月28日(日)及び11月3日(祝日)合計2日間、1日4回実施し、リアルタイムの家庭の状況及び子どもの活動・状態等についてのデータを収集することができた。また、これまでの予備調査、調査I及び調査IIでのネット調査データに基づく結果を教育心理学会(2つ)及び発達心理学会(2つ)において報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
調査Iの紙面データの入力は追加で行った調査も含めて完了し、今後は調査IIの紙面データの読み取りに着手する。その後、ネット調査及び毛髪検査結果と合体させたデータの構築作業を行い、子どもの気質発達への影響を多面的に検証する。これら作業の後には、時代差検証のために、今回の研究データに10年及び20年前の子どもの気質データ及び10年前の母親の育児信念等のデータをマージし、時代差検証の分析を行う。また、政府機関が毎年行っている魚介類の調査結果から魚介類の種別に水銀含有量を求め、食事調査データから子どもの水銀摂取量を推定し、得られた毛髪金属含有量との関連性を検討する。有意な結果が得られた場合、食事調査結果よりダイオキシン類等有害物質の推定摂取量を算出し、最終的に家庭環境等の影響を除外しても、これら有害物質等摂取状況が子どもの気質発達と関連しているかどうかについて検討する。 これまでの分析結果に関しては、既に2013年度開催予定の国際学会(SRCD(シアトル)及びECDP(スイス))において、前者に関しては2つ、後者に関しては3つの学会発表原稿が受理されており、発表に向けての準備を行う。また、日本では日本心理学会及び日本発達心理学会、さらには環境ホルモン学会等において今後の分析結果を順次発表していく計画である。また、国内外の論文誌への投稿の準備にも着手する。
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