2013 Fiscal Year Annual Research Report
「ESD」にアプローチする「地域・世界遺産教育」の創造
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23330259
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
田渕 五十生 福山市立大学, 教育学部, 教授 (10179864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池野 範男 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10151309)
西山 厚 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, その他 (10167570)
草原 和博 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40294269)
五島 政一 国立教育政策研究所, その他部局等, 研究員 (40311138)
吉澤 悟 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 研究員 (50393369)
大知 徳子 県立広島大学, 公私立大学の部局等, 助教 (50549243)
秋山 伸隆 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (60142337)
森本 弘一 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (70243350)
中澤 静男 奈良教育大学, 教育学部, 講師 (80613710)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ESD / WHE / 自然遺産と生態系の保全 / 生態系・自然景観保存の介入 / 危機遺産と人間の叡智 / メディアリテラシーとナショナリズム / 世界遺産への当事者意識 / 世界遺産の破壊と復旧 |
Research Abstract |
本年度は、研究テーマに基づいて、研究協力者が授業実践を行い、授業モデルの有効性を検証した。特に、日本における世界遺産である「知床」と「屋久島」の授業実践記録が提出されて、観光客による生態系の破壊が進行している事実が確認された。その結果、改善策として、入所規制ないし入山規制が必要であることが提唱された。 また、文化遺産である「姫路城」「日光の社寺」「白川郷・五箇山の合掌造りの集落」では、「石見銀山遺跡とその文化的景観」の授業モデル作成と授業実践が行われた。 「姫路城」では、改修後に大量の観光客が押し寄せることが予測され、道路が踏みしめられて雨水が地中に浸透しなくなり周囲の樹木への被害が起った北京の紫禁城の前例に鑑み、木道など誘導路を設ける必要性などが提案された。 「日光の社寺」の授業モデルづくりでは、現地に赴いた研究協力者により、新しい視点からの教材開発が行われた。すなわち「戊辰戦争」の戦場になり、焼失の危険があったが、維新側の総司令官の板垣退助と幕府側の大鳥圭介との叡智によって戦禍を免れた事実が発掘された。その意味では「姫路城」も「日光の社寺」も奇跡的に遺った経緯を確認することが、ESDに繋がる視点であることが確認できた。 研究代表者は旧ユーゴスラビアのクロアチアにあるドブロブニクやボスニア・ヘルチェゴビニナを訪問調査して、セルビア軍が世界遺産であるが故に意図的に爆撃したこと、モスタルの橋のクロアチアの急進勢力が意図的に爆破した事実を確認し、メディアナショナリズムへの冷静なリテラシー育成がESDに繋がる教材化の視点が開けた。さらに、爆破されたブロックを市民がボランティアで修復した事実も確認できた。次年度は、それを授業モデルにして授業で検証をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本における15の世界遺産サイトを研究代表者、研究分担者、研究協力者によってすべて訪問調査した。そして、本年度は、それぞれのサイトの授業モデルづくりが行われて、授業実践にかけてその有効性を検証することができたからである。 さらに、「厳島神社」とフランスの「モンサンミッシェル」、「原爆ドーム」と「アウシュビッツ」、「姫路城」と「紫禁城」など類似する海外の世界遺産サイトと比較研究することで、ESDのツールとしての世界遺産の有効性が確認できた。やはり、世界遺産が遺された理由には共通性と個別性があり、そこで果たした人間の役割、人の営みを教材化の視点に据えることが重要であることが確認できた。 「授業モデル」づくりから、授業実践を行い、授業モデルの修正に有益な示唆は生徒たちの学びを記録した「授業の事後感想」などの質的分析が、授業者の意図がどの程度浸透したかのメルクマールになることが、研究分担者や研究協力者間で共有できた。 研究代表者は、旧ユーゴスラビアのクロアチアとボスニア・ヘルチェゴビナを訪問したが、クロアチアの世界遺産「ドブロブニク」は世界遺産であるが故に意識的に爆撃を受けた事実を住民から直接に聞き取った。また、ボスニア・ヘルチェゴビナの世界遺産である「モスタルの古橋」もカトリック急進派勢力によって爆破された。なぜならムスリム教徒が建築したものであるからである。これらの偏狭な民族主義者を生み出すのがメディア・ナショナリズムである。したがって、ESDの構成要素、またはキーコンセプトに健全な社会批判ができるメディア・リテラシーが必要であると確信を抱いた。 以上のような世界遺産をめぐるマクロな状況を確認して、ミクロな視点から日本の世界遺産と共通性と個別性を踏まえた報告書づくりの方向性が見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去、3年間にわたって直接訪問した日本の15の世界遺産サイトの教材案を実践のフィルターを通して指導事例集を作成することである。既に、そのフォーマットも作成をしており、フォーマットに則して記載して、映像と解説文章、そして指導案と補足資料で冊子を作製する予定である。今後は、全体的な統一性をどう図るかの段階である。なお、フォーマットに記載できなかった文書資料などはCDに焼き付けて実践者が参照できる態勢を整える。 映像資料については、研究代表者、研究分担者、研究協力者が直接にサイトを訪問して撮影をしているので著作権侵害は起こりえない。だが、奈良や京都の社寺は、建築物の肖像権を持ち出して、使用料を要求する恐れがあるので、その場合は、研究分担者の指導学生の切り絵技術の支援を受けて、写真ではないけれどもビジュアルな映像に置換する予定である。 今回の冊子は、日本の世界遺産を中心に作成するが、二つの視点から内容を豊かにする。一つは、地域にある優れた文化遺産や次世代に遺したい景観などを取り込んだ指導事例を紹介することである。世界遺産が無くてもどの地域でも取り組めるESD指導事例集にするためである。もう一つは、グローバルな視点を加味することである。例えば日本の厳島とフランスのモン・サン・ミッシェルには潮の干満を考慮した共通性がある。また、神のお告げなど建築に由来する縁起譚がある。けれども、仏教とキリスト教、フランス革命と廃仏毀釈運動による改変などの個別性がある。 そのような人間性の素晴らしさと愚かさの両側面を教材化することで、人類の多面性に気付くテキスト(「教材事例集」と呼び「資料集」)にしたいと願っている。地域、日本、世界を串刺しにして地球や人類の未来が憂える当事者意識育成の教師指導用書(A Teachers'Guide)にしたい。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 宮島学2014
Author(s)
県立広島大学宮島学センター (秋山伸隆他)
Total Pages
202
Publisher
渓水社
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