2011 Fiscal Year Annual Research Report
CERN LHCf実験の解析深化と最高エネルギーへの新展開
Project/Area Number |
23340076
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笠原 克昌 早稲田大学, 理工学術院, 招聘研究員 (00013425)
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Keywords | LHC / 超高エネルギー宇宙線 / ハドロン相互作用モデル / 空気シャワー / モンテカルロ |
Research Abstract |
CERN LHC加速器での衝突エネルギーは高エネルギー宇宙線(10の14~17乗eV)の衝突のそれに匹敵する.宇宙線の起こす空気シャワー(Air Shower=AS)を観測し物理量を導き出すには,ASのモンテカルロ(MC)・シミュレーションが不可欠である.しかし,核衝突過程の理論的記述は困難で,到来宇宙線のエネルギーや核種の推定にかなりの不定性が出る.これを改善すべく,AS発達に重要かつ予想が困難な超前方領域の発生粒子(主に光子と中性子)のスペクトルをLHCで計り,MCモデルの較正を行う. 今年度は,3.5TeV + 3.5TeV(実験室系で2x10の16乗eV相当)の衝突データから光子のエネルギー・スペクトルを導出した.擬ラピディティーηが8.81~8.99と10.94以上の2領域について、Arm1とArm2と呼ぶ2つの独立した検出器で求めた両者のスペクトルはよく一致した.5つの代表的MCモデルと比較した結果,全エネルギー領域でデータのエラーバーの範囲に収まるモデルはないことが判明したが,全領域でエラーバーを越えてずれるモデルもない.DPMJET3.04とPHYTHIA8.145は光子エネルギー2TeV以上でスペクトルはデータと較べ非常にハードである.QGSJET-II-03はエネルギー全領域(>100GeV)でデータより低い値を示し,8.81<η< 8.91の2TeV以上ではそれが顕著である(データの50%以下).SYBILL2.1は同じη領域で1.8TeV以下で非常に良い一致を示すが,それ以上ではかなりハードになる一方,η>10.94では強度は50%程度しかない.EPOS1.99はQGSJETと同じような傾向を示すが,8.81<η<8.91ではQGSJETよりデータに近い(データの70%程度). GSOバーを使い検出器の放射線耐性を高める改良を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GSOバーを用いた測定器の改良を行っているが,CERN SPSビームによる性能テストがCERN側の都合により延期され,24年度に行うことになった. ただし,予定しているLHCの最高エネルギーのビーム自体も当初より遅れるので,実験には支障がない.光子スペクトルの導出は目標通り絶対値で行い,各種モンテカルロ・コードとの比較も終えている
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Strategy for Future Research Activity |
改良した測定器の性能テストを日本のHIMACの重イオンビームによって行う.さらにCERN SPSビームで高エネルギーでのテストを今夏行う.LHCのp-Pbの衝突が今冬実現する見込みなので,原子核効果をみるためArm2測定器を用いた実験を行う.3.5TeV + 3.5 TeVのデータについては,中性子やパイゼロのスペクトルの導出とMCモデルとの比較を行う. 450GeV + 450GeVデータも解析し,3.5TeVとの比較等を行う.これらは論文として纏める
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