2012 Fiscal Year Annual Research Report
CERN LHCf実験の解析深化と最高エネルギーへの新展開
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23340076
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笠原 克昌 早稲田大学, 理工学術院, 招聘研究員 (00013425)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | LHC / 超高エネルギー宇宙線 / ハドロン相互作用モデル / 空気シャワー / モンテカルロ |
Research Abstract |
CERN LHC加速器での衝突エネルギーは高エネルギー宇宙線(10の14~17乗eV)の衝突のそれに匹敵する.宇宙線の起こす空気シャワー(Air Shower=AS)を観測し物理量を導き出すには,ASのモンテカルロ(MC)・シミュレーションが不可欠である.しかし,核衝突過程の理論的記述は困難で,到来宇宙線のエネルギーや核種の推定にかなりの不定性が出る.これを改善すべく,AS発達に重要かつ予想が困難な超前方領域の発生粒子(主に光子と中性子)のスペクトルをLHCで計り,MCモデルの較正を行うのがLHCf実験である. 今年度は,3.5TeV + 3.5TeV(実験室系で2x10の16乗eV相当)の衝突データからパイゼロの横運動量(Pt)分布を導出した.擬ラピディティーηが8.9~11.0の範囲を6分割して、Arm1とArm2と呼ぶ2つの独立した検出器で求めた両者のスペクトルはよく一致した.5つの代表的MCモデルと比較した結果,全ηについてPt分布が実験データとよく一致するモデルはEPOS1.99であることを明らかにした.DPMJET3.04とPHYTHIA8.145のスペクトルは光子エネルギー・スペクトルと同様データと較べ非常にハードである.QGSJET-II-03はデータより若干ソフトであるが、EPOSについで良い一致を示す. SYBILL2.1の形はdpmjetとpythiaに似てハードであるが,両者よりファクター2強度が小さい.光子スペクトルと総合すると,EPOSが現在の所最良のモデルである.900GeV衝突についても小Pt領域で光子のエネルギースペクトルを求め、7TeVでのデータへ良くスケーリングしていることを示した. GSOを使い放射線耐性を高めた改良型Arm1検出器のテストをCERN SPSとHIMACを用いて行った. また、1~2月にはpPb衝突の観測に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3.5 TeV x 3.5 TeVでのパイゼロの横運動量分布の導出,450GeV x 450GeVでの光子スペクトルの導出を行い,両者を論文といて纏めた.GSOを装填したArm1検出器のビームテストをCERN SPSに於いて終了した.現在解析中である.2月~3月にはCERN LHCに於ける最初のpPb(陽子鉛)衝突の観測にも成功した.原子核効果についての重要な情報が得られるハズである.pp衝突に着いては450GeVと3.5TeVの中間のエネルギーでの観測も成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
改良した測定器のビーム・テストの解析を行う.LHCのp-Pbの衝突観測データの解析を行う.これまで観測したデータに合うようにモデルを修正した場合に空気シャワーの観測量にどの程度の影響があるかを纏める.ARm2検出器の改良に着手し,プラススチック・シンチレータを放射線耐性の高いGSOに置き換える.2013年度はLHCの当初計画では本計画が目標とする7TeV x 7TeVの衝突が実現するはずであったが、CERNは大幅な計画延期を決めた.そのため,本計画も今後は1年強のシフトを余儀なくされる.2013年度は論文作成、国際会議での発表,装置改良と基礎テストに主力を注ぎ,2014年度にCERNでの装置のビームテストを行う.2014年度後半には最高エネルギーの衝突が実現すると予想されるので、それに対する備えをする.
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