2013 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物高温超伝導体における多電子自由度が絡むマルチダイナミクスの研究
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23340093
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 全基 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20303894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山瀬 博之 独立行政法人物質・材料研究機構, 環境・エネルギー材料部門超伝導物性ユニット, 主任研究員 (10342867)
森 道康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (30396519)
足立 匡 上智大学, 理工学部, 准教授 (40333843)
石井 賢司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門構造物性研究ユニット, 研究副主幹 (40343933)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高温超伝導 / 中性子散乱 / 量子ビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに作成した高品質な銅酸化物高温超伝導体の単結晶に対して、本研究の特徴である中性子散乱、ミュオン回転/緩和測定を相補的に行い、スピン相関を詳細に調べた。中性子磁気非弾性散乱実験では、J-PARCにおける高輝度中性子の特性を活かし、これまでにない精度で磁気励起スペクトルを詳細に調べ、典型的なホールドープ系超伝導体であるLa2-xCaxCuO4の低エネルギー領域の格子非整合励起と高エネルギー領域のスピン波的励起が分離していることを強く示唆する結果を得る事ができた。これは磁気励起の起源がエネルギー遷移に対して二種類あることを意味しており、これまで砂時計型磁気励起として報告されてきた磁気励起の解釈について、根本的な見直しを迫る重要な結果となっている。また、T’構造電子ドープ系超伝導の母物質であるPr1.4La0.6CuO4とEr2CuO4の磁性に対するアニール効果を中性子弾性散乱実験とミュオン回転/緩和測定で調べた。電子ドープ系銅酸化物においては、超伝導を発現するために還元アニール処理が必要であるが、磁性に対する影響はこれまであまり調べられていない。今回の結果で、Cu, Pr のordered moment がアニールにより減少することが確認された。この減少したordered momentの大きさは、昨年度までの実験で判明した、中性子非弾性散乱強度の減少度合いと定量的に一致することがわかり、銅イオンのtotal momenそのものがアニールにより減少していることを示す結果を得た。また、スピン密度分布のフーリエ変換成分である磁気形状因子 f(Q)が、CuO2 面内におていアニールの前後で変化していることも確認した。これら結果は、熱処理により銅イオンと酸素イオンの共有結合性が変化するという、これまでに考えられてこなかった新しい側面を提示するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外施設の不調で中性子散乱実験が一件キャンセルとなったが、J-PARCおよびSPring-8で国内実験を進めることができた。昨年度までの結果から、本研究のテーマである多電子自由度の複合相関、あるいはそのダイナミクスを調べるための要となる実験はほぼ明らかとなり、J-PARCで系統的な測定を行うことができた。具体的には、20meV程度の低エネルギー中性子非弾性散乱実験で、スピン格子を示唆する磁気励起強度の異常増大を確認することができ、組成変化の様子も捉えることに成功するといった進展があった。また、中性子と共鳴X線非弾性散乱でそれぞれ得た磁気励起と電荷励起の定量解析を進めることもできた。特に電子ドープ系では、スピンと電荷の高エネルギーダイナミクスに相関があることを押さえつつあり、ホールドープ系におけるこれらダイナミクスの相関とは異なることも示した。データが膨大であるため最終的な解析結果には至っていないが、すでに論文作成には充分な結果を得ており、ドーピング依存性を定性的に押さえることはできている。従って、本研究の目的である、複合相関の存在を裏付ける結果を得たものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に実施できなかった、T'構造Pr1.4La0.6CuO4の広いエネルギー帯域の磁気励起に対する温度変化を調べ、この系のスピンと電荷の相関に関する補完的な情報を得る。この物質は母物質であり、超伝導相におけるスピンと電荷の複合相関を理解する上では重要な出発物質となる。この物質についてアニール処理を施した試料と施していない仕様における磁気励起の温度変化を明らかにするための実験を完遂する。T'構造二次元銅酸化物では、元素置換を行わなくても超伝導が発現する、いわゆる、ノンドープ超伝導の可能性が現在、盛んに議論されている。この測定結果で磁気励起状態を明らかにすることから、ノンドープ超伝導の是非に関する知見も得られると考えている。また、これまでにえら得ている実験データの詳細な解析を進め、磁気散乱強度の絶対値についてエネルギー依存性、組成依存性、温度依存性を導出する。これによってスピン相関のみならずスピン密度分布を含めてより深い物理の考察し、学会発表、論文発表を行って研究をまとめる。
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] Unscalling Superconducting Parameters with Tc for Bi-2212 and Bi-2223: A Magnetotransport Study in the Superconductive Fluctuation Regime2015
Author(s)
S. Adachi, T. Usui, Y. Ito, H. Kudo, H. Kushibiki, K. Murata, T. Watanabe, K. Kudo, T. Nishizaki, N. Kobayashi, S. Kimura, M. Fujita, K. Yamada, T. Noji, Y. Koike, T. Fujii,
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn.
Volume: 84
Pages: 0247061-0247066
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] High-Energy Spin and Charge Excitations in Electron-Doped Copper Oxide Superconductors2014
Author(s)
K. Ishii, M. Fujita, T. Sasaki, M. Minola, G. Dellea, C. Mazzoli, K. Kummer, G. Ghiringhelli, L. Braicovich, T. Tohyama, K. Tsutsumi, K. Sato, R. Kajimoto, K. Ikeuchi, K. Yamada, M. Yoshida, M. Kurooka, and J. Mizuki,
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 5
Pages: 4714/1-8
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Itinerant Effects and Enhanced Magnetic Interactions in Bi-Based Multilayer Cuprates2014
Author(s)
M. P. M. Dean, A. J. A. James, A. C. Walters, V. Bisogni, I. Jarrige, M. Hucker, E. Giannini, M. Fujita, J. Pelliciari, Y. B. Huang, R. M. Konik, T. Schmitt, and J. P. Hill
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Journal Title
Phys. Rev. B.
Volume: 90
Pages: 220506/1-6
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Temperature Dependence of Spin Fluctuations in Underdoped La1.90Sr0.10CuO42014
Author(s)
K. Sato, M. Matsuura, M. Fujita, R. Kajimoto, S. Ji, K. Ikeuchi, M. Nakamura, Y. Inamura, M. Arai, M. Enoki, and K. Yamada
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Journal Title
JPS Conf. Proc.
Volume: 3
Pages: 017010/1-6
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Single-crystal growth of underdoped Bi-22232014
Author(s)
S. Adachi, T. Usui, K. Takahashi, K. Kosugi, T. Watanabe, T. Nishizaki, T. Adachi, S. Kimura, K. Sato, K. M. Suzuki, M. Fujita, K. Yamada, T. Fujii
Organizer
27th International Symposium on Superconductivity
Place of Presentation
タワーホール船堀(東京都)
Year and Date
2014-11-25 – 2014-11-27
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[Presentation] Science from the Initial Operation of HRC2014
Author(s)
S. Itoh, T. Yokoo, T. Masuda, H. Yoshizawa, M. Soda, Y. Ikeda, S. Ibuka, D. Kawana, T. J. Sato, Y. Nambu, K. Kuwahara, S. Yano, J. Akimitsu, Y. Kaneko, Y. Tokura, M. Fujita, M. Hase, K. Iwasa, H. Hiraka, T. Fukuda, K. Ikeuchi, K. Yoshida, T. Yamaguchi, K. Ono, Y. Endoh
Organizer
The 2nd International Symposium on Science at J-PARC 2014
Place of Presentation
つくば国際会議場(茨城県つくば市)
Year and Date
2014-07-14 – 2014-07-15
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