2012 Fiscal Year Annual Research Report
高分子・界面活性剤系の自己組織構造の動力学への密度汎関数理論の応用
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23340120
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川勝 年洋 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20214596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村島 隆浩 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50565520)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 粒子-連続場ハイブリッド・モデル / 生体膜 / マルチスケールモデル / 自己無撞着場 / 粘弾性 / 紐状ミセル / フェーズフィールド / ドラッグデリバリー |
Research Abstract |
1) 膜貫通タンパク質として、具体的なアミノ酸配列と相互作用パラメタを与えたモデル高分子を内包する界面活性剤(Pluronic)のミセルと、リン脂質(DPPC)の2重膜との相互作用をシミュレーションでしらべ、ミセルから生体膜への蛋白質の移動の機構を調べた。シミュレーションは大規模系を対象とすることになるため、シミュレーションコードの並列化を行うとともに、ハイブリッドモデルの特性を生かしたアルゴリズムの段階での並列化も推進することで、通常の粒子シミュレーションに比べて20倍以上の高速化を実現した。 2) 高分子鎖を内包した生体膜が、流動場の中で変形する過程を自己無撞着場-フェーズフィールド・モデルのハイブリッドモデルを用いてシミュレートし、膜の変形と流動のカップリングの特性を明らかにした。特に、従来のヘルフリッヒ曲げ弾性モデルを用いて得られた結果との対応に関して重点的に調べた。 3) 紐状ミセルのモデルを用いて、ずり流動下でのネットワークの変形とつなぎ替えの過程と、その際の粘弾性特性を粒子-連続場ハイブリッドモデルを用いてシミュレートし、不均一流動(シアバンド)の出現する機構を明らかにした。さらに、この粒子-連続場ハイブリッドモデルを寄り粗視化されたスケールの流動シミュレーターに埋め込むことで、空間不均一な流動を直接シミュレーションする手法の開発も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛋白質、界面活性剤、脂質分子膜等を粗視化モデルを用いて記述することで、安定な膜構造および蛋白質を内包したミセル構造を作成することができた。これらは膜貫通蛋白が膜に取り込まれる過程をシミュレートするための重要な要素であり、膜貫通蛋白が膜に取り込まれるプロセスの解明に向けた大きな進歩である。また、ハイブリッド・シミュレーション手法の利点を生かした並列化による高速化にも成功し、大規模系のシミュレーションが可能となったことも、シミュレーションの実現性を高める結果となった。 流動場中での膜の変形シミュレーションに関しては、フェーズフィールド方程式と流体方程式をカップルさせた基礎方程式を導出する点で困難を生じていた(膜の面積保存が成立しない問題が発生)が、グリーン関数を用いた摂動展開の方法を工夫することで解決する方向に進んでいる。 紐状ミセルのハイブリッドモデルに関しては、大規模なシミュレーションが進行中で、もう少しで成果を早急に論文にまとめられる段階まで来ており、今年度中の論文数編の出版だ可能であると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に研究は進んでいるので、H24年度の成果を元にH25年度はそれぞれのサブ課題に関した大規模シミュレーションを実行する。最終年度は、これらの成果を論文にまとめ、かつ国内および海外の各種会議等で報告する。 H24年度途中に研究補助員の転出があり、これにともなってサブ課題の一つ(紐状ミセルの粘弾性)の実行に遅れを生じたが、アルバイトの雇用などでカバーしており、研究の遅れは最小限にとどめられる見込みである。
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Research Products
(11 results)