2012 Fiscal Year Annual Research Report
次世代スパコンと3次元可視化技術による現実的低粘性領域での地球ダイナモ機構解明
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23340128
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
陰山 聡 神戸大学, その他の研究科, 教授 (20260052)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁場の起源 |
Research Abstract |
本年度の成果は以下の3点である:(1)大規模シミュレーション向け実時間可視化手法の開発 (2)内核を組み込んだ新たなダイナモシミュレーションコードの開発 (3)安定層の存在がダイナモに与える影響の研究。以下それぞれの概要をまとめる。 (1)京コンピュータクラスのスーパーコンピュータを用いた大規模な計算機シミュレーションでは出力データが膨大になり、ポストプロセスとしての可視化は非現実的になる。そこで最近、実時間可視化手法が注目を集めている。実時間可視化とは、計算しながら可視化処理を行い、シミュレーション結果を画像として出力する方法である。実時間可視化は将来の大規模シミュレーション向け可視化手法の基盤として期待が持たれているが、対話的な解析ができないという大きな欠点がある。この問題を解決するために我々は膨大な量のIn-Situ可視化を同時に行い、その出力動画ファイル群を対話的に表示させることで対話的な解析を可能にする新たな可視化手法を提案し、比較的小規模な並列シミュレーションに対して実装してその有効性を確認した。 (2)従来の地球ダイナモや太陽ダイナモでは、対流層の内部にある非対流領域を全く解かないか、あるいは近似的にしか解いていない。我々は非対流領域にカーテシアン格子を張り、対流層領域に張ったインヤン格子と相互補間法(キメラ手法)で接続する新しいダイナモコードを開発し、その並列化を行った。 (3)対流層の下部に安定層が存在する場合のダイナモについては不明な部分が多い。我々は対流層の下部で熱伝導率の高く、対流安定な層を設定して、この層が対流層の流れ場と磁場に与える影響について調べた。その結果、対流層で形成された磁場の東西成分が、安定層に閉じ込められるだけでなく、その東西成分が時間的に反転する現象を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画計画では、本年度、(a)シミュレーションモデルの改良、(b)次世代スパコン向けチューニング、(c)実時間可視化手法の開発の3点を行う予定であった。このうち(b)については予定よりも早く昨年度に十分な進捗があった。現在のダイナモシミュレーションコードの京コンピュータ向けチューニングはほぼ限界まで到達したと判断している。一方、(a)と(c)の成果については上の「研究実績の概要」で述べたとおり、十分な進捗があったので、順調に進展していると自己評価できる。以下この二つの項目について具体的な成果をまとめる。 シミュレーションモデルの改良: 計画書で記した通り、カーテシアン格子の組み込みは当初から計画していた重要なモデル改良であった。本年度、カーテシアン格子を組み込んだ新たなコードがほぼ完成し、さらにその並列化も終了した。内核を覆うカーテシアン格子のデザインと効率的な並列化手法を見いだし、実装したことが最大の成果である。まず、内核全体を覆う立方体状領域を設定する。これをlcube(large cube)と呼ぶ。次にlcubeを並列化のために多数の立方体に分割する。これをscube(small cubes)と呼ぶ。scubeの数と大きさは実行時の並列化の大きさに依存して自由に設定できる。並列度が高い場合、lcubeの頂点近くに配置されたscubeの一部は相互補間をする上で不要になる。そこで、あらかじめそのようなscubeにはMPIプロセスを割り当てないようにするアルゴリズムを開発した。これにより効率的で高速な計算格子の配置が可能となった。 実時間可視化手法の開発: 「研究実績の概要」の項目で述べたとおり、新しい実時間可視化手法の開発に成功し、準備的な実験(小規模な並列シミュレーションへの組み込みと機能の確認)にも成功した。この成果は論文にまとめ現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今のところほぼ計画通り進んでいるので、研究方針の大幅な変更は考えていない。ただし、計画書に述べた目標項目のうち、次の2点については検討が必要である。(1) 低エクマン数計算の実施 (2) 太陽ダイナモと地球ダイナモの比較研究。以下これらについて述べる: (1) 低エクマン数領域での長時間シミュレーション: シミュレーションコードのチューニングとモデルの改良は順調に進んでいるが、その成果を生かした低エクマン数領域での長時間シミュレーションを実現するためには、技術以外の問題がある。それは割り当て計算時間である。現在、幸いないことに研究代表者は京コンピュータの一般利用枠で一定の計算資源の割り当てをうけているが、本研究で最終的に追求した低エクマン数領域での長時間計算のためには資源量(ノード時間積)が不足している。この問題を解決するためには、現在よりも大きな割り当てが得られるよう努力すると同時に、何らかの工夫をして少ないノード数で低エクマン数計算が実行できるようにする必要がある。対流層に一定の対称性を仮定して計算量を削減する方法などを現在検討している。 (2) 太陽ダイナモと地球ダイナモの比較研究:研究計画の中で述べた太陽ダイナモと地球ダイナモと比較研究というテーマは、時間が経つにつれその重要性が増しているように感じている。実際、本年度、地球ダイナモコードを改訂して、太陽ダイナモを想定したシミュレーションを行ったところ、既にいくつか重要な知見が得られている。今後は、さらにテーマの研究を深める必要があると考えている。幸い、この研究を通じて開発した様々な手法やツールは太陽ダイナモと地球ダイナモの比較研究に適したものばかりである。
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Research Products
(18 results)