2013 Fiscal Year Annual Research Report
次世代スパコンと3次元可視化技術による現実的低粘性領域での地球ダイナモ機構解明
Project/Area Number |
23340128
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
陰山 聡 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (20260052)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | MHDダイナモ / 地磁気 / 太陽磁場 / データ可視化 |
Research Abstract |
インヤン格子を用いたMHD球殻ダイナモシミュレーションを行い、対流層の底の部分に強い速度シア層が自発的に形成される興味深い現象を見いだした。この速度シア層は太陽のタコクラインを想起させる構造をもっている。計算結果を解析したところ、対流安定な層に閉じ込められた軸対称磁場成分がこの速度シア層の形成に重要な役割を果たしていることがわかった。この軸対称磁場は、MHDダイナモ機構によって対流層内部に形成された磁場の一部が底部の対流安定な層に運び込まれることで維持されている。対流層の速度場をみると、太陽で見られるような赤道加速の分布を持つ作動回転が形成され、また磁場については強い双極子成分を持つ大規模な構造が形成された。興味深いことにこの双極子磁場成分の逆転現象も観察された。以上の成果はAstrophysical Journal誌で出版された。また、大規模な計算機シミュレーションによって出力される大量の数値データを可視化解析するために新しい可視化手法の研究も進めた。それは計算を行いながら可視化も進める「その場(in situ)可視化」と呼ばれる手法を発展させた新しい手法である。「その場可視化」は大規模シミュレーションの可視化手法として近年急速に注目を集め始めている可視化手法である。しかしこの手法には、あらかじめ設定したカメラ位置と可視化手法で撮影された可視化映像しか得られないという欠点がある。この問題を解決するために我々は、大量の可視化カメラをシミュレーション領域に散布し、それぞれのカメラから複数の可視化手法で可視化を行い、膨大な数の動画ファイルを出力させるという新たな可視化手法を考案した。その膨大な数の動画ファイルを独自に開発した動画ブラウザを用いることで対話的に解析することがこの手法の鍵である。準備研究と実証実験を行い、その結果はComputer Phys. Comm.に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MHDダイナモシミュレーションについては、新しいシミュレーションコードが完成し、それを用いた研究成果も着実に得られている。これについては当初の予定以上の成果が挙げられた。また、可視化についても当初計画していた新しい可視化手法の開発に成功したが、その手法をMHDダイナモシミュレーションに組み込むところまでには至っていないので、この点は今後の課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
MHDダイナモにより生成された強い磁場の下での流れ場には二つの全く異なる状態があり、それがある種のパラメータが変化することで互いに遷移するという興味深い現象を我々はこれまでの計算で見いだした。その二つの状態とは、対流層の赤道部分が自転速度よりも早く回転する赤道加速が見られる状態と、その逆の状態である。この二つの状態を分ける重要な無次元量はロスビー数であるという仮説を現在たてている。今後はこの仮説を立証する数値実験を行い、そのメカニズムを明らかにした上で論文にまとめる。また我々は対流層底部に自発的に速度シア層が形成されることを前年度までに見いだした。このメカニズムをさらに追求するためには現在安定層の下部に設定している人為的な境界面を除去する必要がある。そこでインヤン格子とカーテシアン格子を融合した新しいダイナモシミュレーションコード(イン=ヤン=デカルトコード)を開発中である。今後はまずこのコードを完成させ、その定量的な精度検証を行い論文としてまとめる。次に、このコードを用いて内部の人為的境界面の影響を完全になくした計算を行い、速度シア層の形成とそこでの磁場閉じ込め現象についてさらに深く調べる。この速度シア層は太陽対流層底部にあるタコクラインと密接な関係があると予想している。タコクラインの維持機構とその役割については謎が多い。熱伝導率が十分大きな回転系流体では、そのような速度シア層は比較的短い時間で広がってしまう(radiative spreading)を起こしてしまうはずなのに、そのような広がりが現実には起きていないことが特に大きな謎である。そこで、局所領域モデルを用いた解析を進めて速度シア層の閉じ込め問題の解決を目指す。
|
Research Products
(11 results)