2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23340136
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
菅原 敏 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (80282151)
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Keywords | 成層圏 / 平均年代 / 六フッ化硫黄 |
Research Abstract |
成層圏大気試料の六フッ化硫黄濃度分析に特化した新しい分析システムを開発した。成層圏大気の平均年代推定にターゲットを絞り込み、キャリヤガスの種類や分離カラムの長さ、流量、オーブン温度など、様々な分析条件を六フッ化硫黄に最適になるように調整した。特に、キャピラリカラムを採用した結果、これまで12分間程度の測定時間が必要であった1回の分析時間を、精度を維持したまま4分間の短時間で分析できるシステムを構築した。熱帯における成層圏大気の微量成分の分析によって平均年代を推定するために、2012年2月に新たな気球実験を実施し、熱帯成層圏大気の採集に成功した。気球実験は、海洋研究開発機構、およびJAXA・宇宙科学研究本部大気球実験グループと協力し、学術研究船・白鳳丸の研究航海に合わせて実施された。成層圏大気採取は、気球搭載型小型クライオジェニックサンプラーを、赤道上を航行する観測船から大気球によって放球することによって行われ、4回の気球実験によって高度20~30kmまでの異なる高度において大気採取を実施した。実験後に国内に輸送された大気試料を用いて、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、六フッ化硫黄のそれぞれの濃度と、二酸化炭素とメタンの炭素同位体比の測定がそれぞれ行われた。六フッ化硫黄濃度から推定された平均年代は、高度20km付近では1.3年、高度26km付近では2.5年程度であった。これまでの北半球中緯度での観測結果と比較すると、平均年代は予想通りに小さい値を示しており、熱帯域から上昇した大気が対流圏界面を通過して成層圏へ上昇していることを反映していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった、新たな分析システムの構築と、熱帯成層圏における気球実験と成層圏大気試料の採取が概ね予定通りに達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
グローバルな平均年代データの解析のためには、六フッ化硫黄濃度の分析を行っている他の研究機関との間で、標準ガスの濃度スケールの相互比較を実施する必要がある。そのために、早急に相互検定用の標準ガスを製造し、開発した分析システムによる濃度決定を実施する。さらに、グローバルな観測のために、今年度中に国立極地研究所と協力して、南極での気球実験を実施する予定である。これに使用するクライオサンプラーの準備と国内での動作試験を進める。
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Research Products
(4 results)