2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23340136
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
菅原 敏 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (80282151)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 成層圏 / 平均年代 |
Research Abstract |
高精度六フッ化硫黄濃度分析システムにクライオトラップをもつサンプル導入ラインを追加し、低濃度サンプルを高精度で計測できように改良した。また、低濃度サンプルの場合にもこれまでと同様に高速分析を実現するために、ガスクロマトグラフシステムのキャリアガスを、従来の窒素ガスから超高純度ヘリウムガスに変更した。これにより、これまでの標準的な六フッ化硫黄濃度分析では、おおよそ15分程度の分析時間を要するが、本研究のシステムでは4分程度まで短縮することに成功した。ただし、繰り返し精度はおよそ0.2pptvとなり、1980年代の成層圏における六フッ化硫黄濃度の分析にとっては十分な精度を確保するには至らなかった。新たに相互検定用標準ガスを整備し、既に実績のある東北大からプライマリ標準ガスを借用し、正確な濃度の検定を実施した。国立極地研究所と東北大学との共同研究により、初年度末に実施された熱帯成層圏大気の気球実験により、貴重なサンプルの取得に成功している。このサンプルを用いて六フッ化硫黄および二酸化炭素の濃度を分析し、濃度データから熱帯成層圏の平均年代を推定した。その結果、高度20~30kmの熱帯成層圏大気の年代の鉛直プロファイルが明らかになった。特に高度29kmにおける平均年代は3.2年と推定され、これまでに明らかになっている北半球中緯度での年代に比べて著しく小さいことが判った。日本、熱帯に続いて、今年度は南極において気球実験を実施し、成層圏大気の採取に成功した。この大気サンプルは日本に到着したばかりであり、翌年度に分析を実施する予定である。日本上空で得られた成層圏データの解析も進められ、成層圏大気の輸送過程の解明にとって、平均年代とともに新たに重力分離データが重要であることが判明した。これらの成果は国内・海外の関連学会で発表するとともに、論文としても発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではグローバルな成層圏大気年代の観測的研究を目指しているが、これまでに赤道太平洋上における熱帯成層圏、および南極上空の極域成層圏における気球実験を実施し、いずれも貴重な成層圏大気サンプルの取得に成功している。南極成層圏サンプルの解析作業は翌年度に実施予定であるが、これにより、北半球中緯度、赤道、南極の大気年代データが得られることとなり、概ね当初の研究目的を達成しつつある。また、観測を通して新たに発見された成層圏大気における重力分離効果が、大気年代とともに成層圏大気の輸送過程にとって重要であることを明らかにし、かつ、著名な国際学会や海外科学雑誌において発表できたことから、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
グローバルな成層圏大気年代の空間分布に加えて、その長期傾向を明らかにすることが重要である。そのためには、過去の観測データの蓄積がある日本上空の成層圏大気年代について、その最新の状態を明らかにする必要がある。そこで、最終年度である翌年度には、国内における成層圏大気採取実験を実施する。その結果から、六フッ化硫黄や二酸化炭素の濃度に基づく大気年代の長期トレンドと経年変化を明らかにする。さらに、それぞれの濃度の鉛直プロファイルの長期変化から、成層圏大気中の高度の違いによる循環の変化の違いを明らかにする。この研究を協力に推進するためには、2次元または3次元の化学気候モデルを用いたシミュレーションが不可欠である。そこで、今後はこの分野の数値モデル研究において実績のある米国NOAAの研究者と協力し、我々の観測結果と数値モデルを組み合わせることで、成層圏大気循環の長期的な変動の要因などを明らかにしてゆく。
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[Journal Article] Gravitational separation in the stratosphere - A new indicator of atmospheric circulation2013
Author(s)
Ishidoya, S., Sugawara, S., Morimoto, S., Aoki, S., Nakazawa, T., Honda, H., and Murayama, S.
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Journal Title
Atmos. Chem. Phys. Discuss.
Volume: 13
Pages: 4839-4861
DOI
Peer Reviewed
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