2011 Fiscal Year Annual Research Report
全大気統合モデルを用いた温室効果ガス増加による超高層大気長期変動の研究
Project/Area Number |
23340149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三好 勉信 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (20243884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陣 英克 情報通信研究機構, 電磁波計測研究センター, 専攻研究員 (60466240)
藤原 均 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50298741)
品川 裕之 情報通信研究機構, 電磁波計測研究センター, 主任研究員 (00262915)
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Keywords | 熱圏・電離圏 / 地球環境変動 / 寒冷化 / 数値シミュレーション / 長期変動予測 |
Research Abstract |
人為起源の二酸化炭素濃度増加が、熱圏・電離圏に及ぼす影響を、我々の研究グループで開発した大気圏-電離圏統合モデル(GAIA)を用いて定量的に調べてみた。まず、二酸化炭素濃度が320ppmv(1960年代の値)の場合と400ppmv(2010年代の値)の場合について、熱圏の大気温度・密度および電離圏の電子密度の違いについて調べてみた。その結果、二酸化炭素濃度の増加に伴い、高度200km以上の大気温度は約12Kの低下、高度200-250kmの電子密度は5-15%の増加となることが明らかとなった。これらの変動と二酸化炭素濃度増加を関連づけるためには」、GAIAの下層大気部分に観測データ(再解析データ)を入れて計算する必要がある。そこで、平成23年度には、2008年から2010年の期間について、再解析データをナッジングした計算を行い、熱圏・電離圏の衛星観測結果と比較し、GAIAモデルの検証を行った。その結果、成層圏突然昇温時の電離圏変動が、観測結果とよく一致していること、また、下層大気起源の潮汐波に伴う電離圏の季節変化についても電離圏観測結果とよく一致し、GAIAモデルが超高層大気変動をよく再現できるという確証を得た。 さらに、超高層大気では、太陽活動や地磁気活動などの影響を強く受けることが知られている。したがって、二酸化炭素増加に伴う長期変動を調べるには、太陽活動や地磁気活動などの自然変動に起因して起こる熱圏・電離圏の長期変動を抽出する必要がある。そこで、太陽活動変動影響については、太陽フレアーなど太陽活動の大規模な変動が、超高層大気にどの程度影響を及ぼすかについて、GAIAを用いて調べてみた。一方、地磁気活動に伴う超高層大気変動については、GAIAに、地磁気活動変動を見積もるための改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度以降に計画していた、中性大気と電離大気の運動量交換過程に関する研究については、E層・F層ダイナモの効果を定量的に見積もった結果を平成23年度中に査読付き論文として発表するなど、予定を上回る成果が得られた。一方、平成23年度中に予定していた1950年伏のシミュレーションについては、再解析データの取得が遅れたため、平成24年度以降に行うことにした。このようにおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度取得した過去32年間にわたる気象再解析データをモデルの下部境界条件に用いて、1980年代と2010年代での熱圏・電離圏での二酸化炭素濃度増加に伴う寒冷化の影響をより定量的に明らかにすると共に、二酸化炭素濃度増加とは無関係な対流圏・成層圏の年々変動の影響とを、より明瞭に区別して議論を行う予定である。さらに、二酸化炭素濃度が一定の割合で増加した場合の数十年先の超高層大気の将来予測も行う予定である。1950年代から1970年代の気象再解析データとして、NCAR/NCEPを用いる予定であったが、日本の気象庁が中心となって提供する予定のJRA55に変更することとした。
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Research Products
(21 results)