2012 Fiscal Year Annual Research Report
全大気統合モデルを用いた温室効果ガス増加による超高層大気長期変動の研究
Project/Area Number |
23340149
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三好 勉信 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20243884)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
品川 裕之 独立行政法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究所, 主任研究員 (00262915)
藤原 均 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50298741)
陣 英克 独立行政法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究所, 専攻研究員 (60466240)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 熱圏・電離圏 / 地球環境変動 / 寒冷化 / 数値シミュレーション / 長期変動予測 |
Research Abstract |
人為起源の二酸化炭素濃度増加が、熱圏・電離圏に及ぼす影響を、我々の研究グループで開発した大気圏―電離圏統合モデル(GAIA)を用いて定量的に調べてみた。昨年度に得られた二酸化炭素濃度増加の影響が、下層大気の年々変動(特に成層圏突然昇温)に伴う超高層大気変動とどの程度異なるかに焦点を当てて解析を行った。その結果、成層圏突然昇温発生後には、熱圏の平均温度が10-20K程度低下することが分かった。これは、二酸化炭素濃度が320ppmv(1960年代の値)から400ppmv(2010年代の値)に増加した場合の熱圏の平均温度低下量(12K)と同程度であることが分かった。このように、熱圏大気の長期変動を調べる際には、下層大気変動の影響を十分に考慮する必要があることが分かった。そこで、1980‐2000年代の太陽活動極小期について、GAIAによる数値シミュレーションを実行し、解析を行った。その際、成層圏突然昇温が発生した年と発生しない年に場合分けをして解析を行い、下層大気変動に伴う熱圏における大気波動活動度の年々変動の影響を詳細に調べた。その結果、二酸化炭素濃度増加に伴う熱圏大気の長期変動を下層大気変動の影響と分離するには、更なるシミュレーションおよび詳細な解析が必要であることが明らかとなり、平成25年度に引き続き行うことにした。また、下層大気起源の潮汐波に伴う熱圏・電離圏の潮汐振動の季節変化についても衛星観測結果と比較検討を行った。その結果、一部観測結果と不一致する部分が存在するものの、おおむねGAIAモデルが潮汐振動に伴う超高層大気変化をよく再現できるという結果を得た。さらに、超高層大気では、地磁気活動などの影響を強く受けることが知られているので、地磁気活動変動を定量的に見積もるための数値モデルの改良を昨年度に引き続き行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度以降に計画していた、下層大気変動の影響に関して、成層圏突然昇温時の超高層大気変動に関する研究については、平成24年度中に査読付き論文として発表するなど、予定を上回る成果が得られた。特に、2009年1月に発生した突然昇温に伴う超高層大気変動に関する研究成果では、これまで考えられていた以上に、超高層大気が下層大気の影響(特に大気波動変動の影響)を受けることが示された。この結果は、今後長期変動を見積もる上で参考にすべき結果であると考えられる。また、シミュレーション結果と衛星観測結果の比較に関する結果に関しても、本モデルが観測結果を十分に再現できており、超高層大気の長期変動に関する研究を行うのに十分なモデルであるとの確信を得たうえで、査読付き論文として発表した。これらの結果に基づき、二酸化炭素後歌に伴う超高層大気変動の見積もりを学会などで広く発表することができたうえ、様々な分野の研究者と議論を行い進展が見られた。一方、平成24年度中に予定していた1950-70年代のシミュレーションについては、採用する再解析データについてのさらなる検討が必要と判断したため、平成25年度以降に行うことにした。このようにおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度取得した過去32年間にわたる気象再解析データをモデルの下部境界条件に用いて、1980年代と2000年代(2000年から2012年まで)での太陽活動極小期における熱圏・電離圏での二酸化炭素濃度増加に伴う寒冷化の影響をより定量的に明らかにする。特に、二酸化炭素濃度増加とは無関係な対流圏・成層圏の年々変動の影響については、昨年度までの解析結果を基に、成層圏突然昇温の有無やプラネタリー波の活動度の年々変動の影響を排除できるよう工夫する。その上で、過去20-30年間での二酸化炭素濃度増加に伴う超高層大気変動について定量的な見積もりを行う。この結果を参考にして、二酸化炭素濃度が一定の割合で増加した場合の数十年先の超高層大気の将来予測も引き続き行う予定である。また、太陽活動極大期についても、1980年代と2000年代について二酸化炭素濃度増加に伴う寒冷化の影響の定量的な見積もりが可能かどうか検討する。その際、昨年度までに行った、地磁気活動に伴う超高層大気変動の見積もり結果を参考にして、地磁気活動度変動に伴う超高層大気変動の影響に注意して解析を行う。一方、1950年代から1970年代の気象再解析データを用いた計算の準備も開始し、二酸化炭素濃度増加に伴う超高層大気の長期変動についてより正確な見積もりができるようにする。
|