2011 Fiscal Year Annual Research Report
パルス電子-電子多重磁気共鳴法の開発と量子状態制御
Project/Area Number |
23350011
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐藤 和信 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90264796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 重顕 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特任講師 (70342821)
杉崎 研司 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 博士研究員 (70514529)
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Keywords | 量子コンピュータ / 電子スピン共鳴 / 量子状態制御 / ビラジカル / ELDOR / スピンニューテーション / 量子情報 |
Research Abstract |
量子コンピュータの開発や量子情報通信を含む量子情報科学の理論的研究が急速に発展し、量子状態を利用した情報処理技術が次世代の基盤技術として注目を集めている。量子コンピュータ(QC)の概念・基礎理論が確立しつつあり、実験的な側面から基礎理論を検証し、現実の系で量子コンピュータを開発することの重要性が高まってきている。本研究では、コヒーレント2重マイクロ波パルス電子-電子二重共鳴(CD-ELDOR)技術を拡張し、3つ以上の電子スピンが弱く相互作用する弱交換相互作用多スピン系に適用可能な新しいコヒーレント多重マイクロ波パルス電子-電子多重共鳴分光技術を開発した。位相制御した任意波形マイクロ波発振器のLバンド高周波をXバンド帯にアップコンバートすることにより複数のマイクロ波パルス(Xバンド)を利用した電子多重磁気共鳴が可能となり、3スピン系への適用を目指している。また、反磁性物質中に磁気的希釈した弱交換相互作用ニトロキシドビラジカル分子系にパルズESR技術やELDOR技術を適用することにより、マイクロ波パルス照射に対する2スピン系のスピンダイナミクスを明らかにした。本研究成果は、これまで自明でなかった弱交換相互作用系におけるスピンニューテーション運動の詳細を実験的にひも解くとともに、2スピン4準位系の輻射場存在下におけるスピン応答の一般的な理解と精密制御を実現するための基礎的知見として重要である。電子2スピン系に加え、安定な同位体置換ジフェニルニトロキシドラジカルにELDOR-NMR法を適用し、電子スピン禁制遷移を用いた4準位系のスピン状態制御が可能であることを示した。ゼーマン相互作用の弱い低磁場・低周波磁気共鳴法を用いて積極的に電子スピン禁制遷移を活用する多スピン系の精密制御の有効性を示唆するものであり、位相制御Lバンド高周波技術を利用する量子状態制御への研究展開につながる成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子スピン系の評価・解析が順調に進展するとともに、新しい技術開発が当初の計画通りに進行している。開発技術を用いた新しい実験を実施できるところまで来ており、今後新しい研究成果を上げることができると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に開発した複数のマイクロ波パルスを扱うことのできる電子多重磁気共鳴技術を、安定なニトロキシドビラジカルやトリラジカルなどの分子多スピン系に適用し、本技術の有用性を実験的に検証する。分子スピン系の電子スピン共鳴遷移の起こりやすさを考慮することによって、34GHz帯と9.5GHz帯のパルス分光装置を使い分けることにより量子状態制御の実験を遂行する。遷移確率を大きく変化させるためには、高磁場近似の成立しない実験条件の下で実験を行うことが必要になってくる。より有利な実験条件設定のために、単結晶試料等を用いることによる配向選択的な実験の実施や、低磁場・低周波磁気共鳴測定への展開を検討し、計画達成を目指す。
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Research Products
(60 results)